とはいえ、営業しているパチンコ店が開店前に行列を作っていることが世間に知れ、非難の的となったことは理解ができる。そして万一ホールからクラスターが発生したら、世間のバッシングは大きなものになることは想像に難くない。

また、この過去前例のない長期休業で倒産するホールが出てくることを予測して、緊急事態宣言直前にホールに預けている玉やメダル、通称「貯玉」を精算したユーザーも見受けられた。これは銀行の預金を下ろす人で殺到するのと同じことで、パチンコ店にとっては資金のショートを招いてしまう。さらに貯玉を精算したことで、次回の来店動機さえも失ってしまうなど、ホールにとってデメリットしかない。そんな事態を防ごうと、一日に交換できる貯玉数の上限を設けたり、貯玉自体の交換を禁止したホールもあったようだ。

店を閉めたくても閉められないジレンマ

そしてそんなユーザーの予想は現実になる。4月15日には、都内で3店舗を展開する(株)赤玉が倒産。業界初のコロナ破産として報じられた。今後も同じような事情で倒産するホールが出てくる可能性は大いにある。ホールが潰れれば、新台を卸している遊技機メーカーをはじめ、景品納入業者、さらには設備の設置業者やパチンコ台の運送業者など、ホールに付随する業者も割を食ってしまう。そしてなにより、そこで働く従業員も失業することになってしまう。パチンコ不要を訴える声は多く聞かれるが、廃業することで連鎖的にあらゆる業種に影響が出てしまうのだ。

非常事態宣言は5月6日までとアナウンスされている。果たしてそれ以降ホールににぎやかな喧噪は戻ってくるのだろうか?

さらなる営業自粛の延長を迫られたら、体力のある大手法人でも、厳しいことになりかねない。そしてたとえ営業再開できても、1カ月近くホールを閉めた損失を埋め合わせなければならない。お客さんに還元する余裕がなくなることが予想される。

さらに、新型コロナウイルスを契機とした収入の減少によって、しばらくはパチンコなどの遊興に講じる余裕がなくなる人もいるだろう。このような状況で、パチンコ店に人は戻るのだろうか。集客ができなければ、ホールにとって非常に厳しい未来が予想される。

パチンコ店が営業していても目くじら立てられることなく、何も不安もなく玉を弾ける平和な日々が、どれだけありがたいものだったのか実感させられた。

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