平均開始年齢は24.8歳、正社員がほぼ半数
一般に、性的問題行動は、思春期前後から20代早期に開始され、歳を重ねるにつれ、その活動が活発になる。そして、50代になると急激に鎮静化する。これは、一般の性的行動とも類似するパターンである。
われわれのデータでは、性的問題行動の平均開始年齢は、24.8歳だった。一方で、現在の年齢が30代、40代という人が特に多いのは、20代頃から問題行動を行っていたが、発覚したり、生活に支障が出たりして、受診するに至るには10年以上のタイムラグがあるということだろう。その10年以上の間に、いったい何人の被害者が出たのだろうか。
仕事の有無を見ると、フルタイムの仕事をしている人が46.7%、アルバイトが3.1%のほか、学生13.0%、無職37.2%である。無職の人たちは、ほぼ全員が事件によって職場を解雇された人たちである。
先にも触れたが、薬物依存症の患者さんのなかには、そもそもこれまで一度も正業に就いたことがないという人もめずらしくない。しかし痴漢外来の患者さんは、性的問題行動以外の面では、生活に大きな崩れがなかったという点が特徴である。これは、他の先行研究で指摘されている知見とも一致する。
また、既婚者や子どもがいる人が多いのも、このグループの特徴である。既婚者は51人(37.2%)おり、残りは独身か離婚した人たちである。離婚に至った多くのケースは、やはり性的問題の発覚や逮捕などが原因となっている。
さらに、学歴も薬物依存患者のグループと比べると、非常に高い。大卒以上の学歴を有する人が、70人(51.1%)いる反面、中学卒業の学歴の者は二人(1.1%)しかいない。
このように、痴漢外来の患者さんは、高い学歴を有し、家庭や仕事を持っている人たちが多いということが、薬物依存症やアルコール依存症の患者さんたちとは、大きく異なっている。