ストーカー被害はどうすればなくせるのか。筑波大学の原田隆之教授は「福岡で起きたストーカー殺人事件では、被告に接見禁止命令が出ていたにもかかわらず、最悪の結末を迎えてしまった。現行制度での対処には限界があり、ストーカー行為の背景にある心理学的要因に目を向ける必要がある」という――。
福岡ストーカー殺人事件に見る現制度の限界
福岡市のJR博多駅前で、元交際相手の男に女性が殺害されたストーカー事件から約1カ月が過ぎた。福岡地検は、容疑者に対して精神鑑定を行うことも視野に入れていたようだが、明白な精神障害の証拠がないとして、鑑定留置を行うことなく、殺人と銃刀法違反の容疑で男を福岡地裁に起訴した。
この事件では、被害者が何度も警察に相談をし、警察は禁止命令を出すなど、現在の制度のなかではできる限りの対処がなされていた。しかし、それにもかかわらず、このような最悪の結末を迎えてしまったことを考えると、現行の対処には限界があり、さらなる対応策を検討する必要があると言えるだろう。
警察統計を見ると、ストーカー事案の発生件数は、ここ10年ばかり約2万件と横ばいの状況である。とはいえ、軽微な事案では警察にまで届けることはないであろうから、このデータには相当の暗数があると考えるべきである。