感染することより恐ろしいコロナの問題とは

「新型コロナウイルスが恐ろしいのは、実は感染することだけではないのです。ニューヨーク市内の病院はほぼ100%が“コロナ専用病棟”になっていて、多くの問題が起きています」

ニューヨークの病院は現在、緊急を要する以外の手術は中止している。しかしそれだけではないようだ。キヨコが聞いた話では医師はがん患者に対し、免疫が弱っている状態ではコロナに感染する確率が高い。それでもいいなら入院治療する、というような会話が行われているという。

「もし、あなたに高齢でさまざまな疾患を持っている両親がいたら、その人はもちろんコロナに感染する確率は高い。でも、もっと恐ろしいのは感染する以前に、もともとの病気が悪化しても病院に行けなくなるということなんです」

実は、ニューヨークでは救急車内で亡くなる人が激増しているという数字もある。患者が我慢できないほど症状が悪化してから救急車を呼ぶためだと推測されている。その救急システムもパンクし、車内で亡くなった人は病院ではなく検視官の元に直接送られるよう法令が改正されたばかりだ。そして彼らを運ぶ救急隊員の多くも感染している。

「若者だって安心はできない。感染していて知らないうちに祖父母にうつしているかもしれないし、高齢の家族を世話している人がもし感染したら、彼らを助けられる人は誰もいなくなってしまう」

その恐ろしさをキヨコは今骨身に染みている。

「看護師こそ真のヒーロー」と手紙が

最近、キヨコが働く病棟の看護師らのもとに、ある朝たくさんの封筒が送られてきた。

差出人は地元の子供たち。封筒の表にはメッセージが書かれていた。「患者たちを助けてくれてありがとう」「ウィー・ラブ・ユー」「看護師こそ真のヒーロー」そして「あなたは本当に勇敢です」。

地元の子どもたちから届いた手紙。「あなたたちは本当に勇敢です」と感謝がつづられている
(写真提供=キヨコ・キム看護師)
地元の子どもたちから届いた手紙。「あなたは勇敢です」と感謝がつづられている

封筒の中にはハンドクリームが入っていたという。1日中手を洗い続ける看護師の手がかさかさにならないようにという思いやりだ。彼らの気持ちがうれしくてたまらなかったと彼女は話す。

同僚も家族も感染し、いつ自分も感染するか分からないコロナ専用ICUで働き続ける彼女。逃げたいという気持ちになったことはないのだろうか?