世界最多の販売台数を誇る日産「リーフ」

日本の電気自動車は、第2次世界大戦後の1947年に発足した「東京電気自動車」、後の「たま自動車」が製造した「たまセニア」、「たまジュニア」が有名だ。当時はガソリンエンジン車よりも経済性に優れ、日本でも電気自動車が評判を呼んだ時代もあったのだ。しかし、朝鮮戦争の勃発で戦略物資である鉛が不足し、バッテリー価格が暴騰して、電気自動車は表舞台から姿を消したのである。

たま自動車はのちに「プリンス自動車工業」に改称し、やがて日産自動車に吸収合併される。その日産が2010年に新世代の電気自動車「リーフ」を発売した。リーフは2018年に販売台数が30万台を突破し、100%電気自動車としては世界最多の販売台数を誇る。

一方、三菱自動車は、リーフより1年早い2009年に「アイミーブ」を電気自動車の量産車として、世界に先駆けて発売している。海外では、アメリカの「テスラ」が、高級電気自動車の販売を伸ばしている。さらに最近ではフォルクスワーゲンがEV専用車「ID.3」、メルセデス・ベンツは「EQV」、ポルシェもEV「タイカン」を発表するなど、電気自動車の開発と発売が進んでいる。

「100年に1度のモビリティ革命」に突入している

CASEの中で、自動車メーカーにとって従来とは異質のビジネスモデルがシェアリングである。自動車メーカーはこれまで、消費者に自動車を購入してもらうことに意を尽くしてきた。価格別に大衆車から高級車までフルラインナップし、スタイルや目的別にはセダンやリムジン、サルーン、スポーツカーやオフロードタイプ、ピックアップトラックまで用意して、購買意欲をそそってきた。それがMaaS社会になると、マイカーが売れなくなるかもしれない。

中村尚樹『日本一わかりやすい MaaS × CASE 最前線』(プレジデント社)
中村尚樹『ストーリーで理解する 日本一わかりやすいMaaS&CASE』(プレジデント社)

そこでダイムラーは先手を取り、クルマを個人が専有するのではなく、シェアするという選択肢も提示した。これまでのビジネスモデルに執着していては、将来は危ういと感じ取ったのだろう。

MaaSとCASEをキーワードに、交通事業者各社や自動車メーカー、部品メーカー、さらにはIT企業がプレーヤーとなって、「100年に1度のモビリティ革命」と呼ばれる時代に突入した。MaaSやCASEを構成する技術や考え方は、その多くが以前から研究開発されてきたものである。それがIT技術の進歩を背景に、MaaSやCASEというキーワードで再構築され、新たな価値が創造されようとしている。

移動手段の先には、移動する人びとの目的がある。交通が変われば、社会が変わる。新たなビジネスチャンスの創造にもつながるのだ。