自己所有ではなくシェアされた、電動でクリーンなクルマが、ネットワークに常時接続され、自動運転で目的地まで運んでくれるのが、究極のCASEの世界だ。このCASEがいまや、ダイムラーばかりでなく、すべての自動車メーカーが目指すべきキーワードになっている。

自動車製造は、数万点にも及ぶ部品を必要とする、巨大な組み立て産業である。しかし自動車の部品を作る会社が、自動車メーカーを名乗れるわけではない。自動車メーカーにとって、内燃機関であるエンジンの製造技術は、他業種からの参入を許さない大きな壁だった。エンジンを製造する者こそ、自動車メーカーと名乗れたのだ。

ダイムラーとBMWは手を組んで5会社を設立

ところが環境対策や資源問題で、動力がエンジンに代わって電動モーターになると、構造のシンプルなモーターは比較的簡単に製造できるため、他の業種からの参入が容易となる。さらに自動運転やコネクテッドは、自動車メーカーより、むしろIT業界との親和性が高い分野である。こうした理由で各自動車メーカーは、大慌てでCASEへの対応に追われているのだ。

高級車のベンツを所有することはステータスシンボルである。そのベンツを作っているダイムラーが先頭を切って、MaaS時代に対応した新しいビジネスモデルとしてCASEを構築しようとしている。

ダイムラーのライバルであるBMWは、CASEの並びを変えて「ACES」(Autonomous, Connected, Electrified and Services)という名前で、電動化や自動運転の開発、カーシェアや駐車サービスなどの事業を独自に展開してきた。そんな両社が、2019年2月にモビリティ事業を統合し、デマンド交通の「リーチ・ナウ」、充電サービスの「チャージ・ナウ」、ライドヘイリング(配車サービス)の「フリー・ナウ」、駐車サービスの「パーク・ナウ」、カーシェアの「シェアー・ナウ」という5つの新会社を共同で設立した。

ライバルが協力することで新ビジネスが生まれる

このように、CASEはメーカー主導で提案された概念である。一方、MaaSは“モビリティ”、つまり「移動のしやすさ」という目的がまず存在し、様々な交通は必要なときに必要なだけ利用する手段となっているように、利用する側に重点を置いた概念であることがわかる。「マイカー所有の是非」という二者択一の視点に立てば、確かに両者は「MaaS vs CASE」として対立する。しかし総体的に見れば両者は協力関係にあり、CASEの先端技術が、MaaSの領域を拡大することになる。

MaaSとCASEは、自動車メーカーとマイカーを頂点としたクルマ社会のパラダイムシフトを引き起こそうとしている。かつてのライバルが協力せざるを得ない時代となり、そこに新たなビジネスチャンスも生まれる。