感染症を政治的に利用することは大きな誤りである

文大統領は「7000人を超える感染者数の多さは充実した検査態勢の裏返しだ。日本も同じように検査を行えば多くの感染者が確認されるはず。日本からの入国を厳しく制限するのは当然だ」と韓国の国民に日本への対抗措置の正当性をアピールしている。

しかし、感染症対策は「目には目を、歯には歯を」という単純な対抗措置では効力を発揮しない。前述した進藤さんの言葉にあるように「連帯」が必要なのである。世界中に感染が拡大するなかでは、国と国との協力が不可欠なのである。

相手は未知の感染症だ。私たちは不安と恐怖とも戦わなければならない。冷静に対処しないと新型コロナウイルスをコントロール(制御)することなどできない。文大統領に忠告する。「日本が間違っている」と感染症を政治的に利用することのほうが、大きな誤りである。

日本と韓国の一番の敵は病原体の新型コロナウイルスだ

安倍政権も悪い。韓国という国が対抗措置を取ることぐらい分かっていたはずだ。対韓という国家間の根回しに欠けている。安倍首相は文大統領の扱い方をもっと勉強すべきだ。中国は何も言ってこないし、してもこないではないか。習近平(シー・チンピン)国家主席の来日延期を決める過程で中国側と調整が図れていたからだ。なぜ同じことが韓国にできなかったのか。

韓国からの入国制限はこれまで通りでなんら問題はない。それよりもクラスターと呼ばれる集団感染が散発している日本国内の現状を憂慮し、水際対策から国内対策にきちんと軸足を移すべきだ。

安倍首相も文大統領も思い出してほしい。

韓国人元徴用工訴訟で韓国の最高裁が、日企業に賠償を命じた判決(2018年10月30日)をきっかけに、日本が対韓輸出規制を強化して日韓関係がかなり悪化した。翌2019年8月23日には韓国が対抗措置として日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA、ジーソミア)の破棄を決定。GSOMIAの失効まで残り1日と迫った同年11月22日にどうにか、継続となった。あの日、日韓関係のさらなる悪化は回避され、日米韓の安全保障協力も維持されたではないか。

「自国だけ良ければいい」という自国第一主義は感染症には通じない。日本と韓国にとって一番の敵は、病原体の新型コロナウイルスだ。いがみ合っていてはどうしようもない。国と国との協調関係が重要だ。2国が協力して初めて新型コロナウイルスを封じ込めることができる。