臨時休校の狙いは「子供を守ること」だけではない

「またも唐突な方針転換である。その必要性や効果について、納得のいく説明もない。『国民の不安感の解消』を目的に掲げながら、これではかえって混乱を助長しかねない」

皮肉っぽく書き出すのは、3月7日付の朝日新聞の社説だ。見出しも「中韓入国制限 説明なき転換、またも」である。

「また唐突」と朝日社説が指摘するのは、2月27日に安倍政権が全国に呼びかけた小中学校と高校の臨時休校のことだろう。

沙鴎一歩はこの臨時休校には賛成である。感染症は集団生活の中で蔓延していく。その代表が学校だ。特に新型コロナウイルスの場合、子供は感染しても発症しない不顕性感染や発症しても軽症で終わることが多いようだ。子供から子供に感染はすぐ広まる。

その結果、感染した子供が家で高齢者にうつす。高齢者は新型コロナウイルスに弱く、命を落とす危険がある。臨時休校は高齢者を守るための防疫作戦なのだ。

ただし問題が2つある。1つ目の問題は安倍首相が格好をつけて突然、公表したところ。2つ目の問題は、「子供を守ること」を強調し、この防疫作戦の本当の狙いである「高齢者を守ること」をしっかり説明しなかったところだ。子供を犠牲にして高齢者を守るのか、と批判されたくなかったのだろう。

本当に中国の武漢で感染拡大が弱まってきているのか

朝日社説は書く。

「中国では武漢以外での感染拡大の勢いが弱まり、韓国は全土に感染が広がっている状況とはいえない」
「にもかかわらず、いま両国の全域を一律に対象とすることに、どれほどの意味があるのだろうか。感染者が急増しているイタリアやイランの扱いとも整合性がとれない」

朝日社説の字面を追っていくと、ついうなずいてしまうが、本当に中国の武漢で感染拡大が弱まってきているのだろうか。「隠蔽いんぺい」が当たり前の中国である。中国政府が出した感染者数を沙鴎一歩はうのみにはしたくない。もう少し様子をみたいと思う。

韓国にしてもこの先、感染拡大は続くだろう。韓国で2015年に発生した中東呼吸器症候群のMERS(マーズ)の感染拡大を考えると、こちらも様子見が必要だと思う。

最後に再び、安倍政権の問題に触れたい。すでに始まった学校の臨時休校にせよ、近くまとまるという特別措置法の改正にせよ、国民の理解がなければ成り立たない。官邸主導によるトップダウンには賛成できない。新型コロナウイルスを感染法上の指定感染症にしたときも、「安倍1強」による独断専行で決めたことから、批判の声を上げる専門家は少なくなかった。

進藤奈邦子さんの「感染症対策を成功させるには、国民がどれだけ理解し、協力してくれるかが鍵になる」という言葉をかみしめてほしい。

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