土地取引で約55億円を騙し取られた詐欺事件をめぐり、積水ハウスから事実上解任された和田 勇前会長が、自身を含めた取締役候補の選任を求める株主提案を同社に起こしている。「復権を目指す気はさらさらない」と言う和田氏を直撃し、その意図を聞いた――。
現経営陣を交代させる株主提案について記者会見する積水ハウスの和田勇前会長(中央)ら
写真=時事通信フォト
現経営陣を交代させる株主提案について記者会見する積水ハウスの和田勇前会長(中央)ら=2020年2月17日、東京都中央区

「クーデター」による会長解任から2年

3月4日、東京・丸の内で物珍しい勉強会が開かれた。中身は日本コーポレートガバナンス研究所(JCGR)代表理事を務める若杉敬明東京大学名誉教授が日本のコーポレートガバナンス(企業統治)について話すという至って普通の勉強会なのだが、これを物珍しいというのは若杉名誉教授の横に積水ハウス前会長の和田勇氏が座っていたからだ。

和田氏と言えば同社取締役を26年務め、社長を10年、会長に10年続けた積水ハウスの「天皇」だった人。長期間にわたって同一人物がトップに君臨する企業を、人は健全なコーポレートガバナンスが働いていない会社と思うだろう。そんな会社のトップにいた張本人が勉強会で熱心に耳を傾け、挨拶で「私は若杉先生の弟子になってコーポレートガバナンスを勉強したい」などと言っているのである。誰もが不思議に思うだろう。

和田氏は2018年に会長から相談役に退いたが、これは勇退ではなく、事実上の解任だった。さまざまなメディアがその経緯を書いているが、改めて簡単におさらいしておく。