こうして畳み掛けた結果、「確かにちょっと無茶だよな」と、上司のほうから進んで数字を下げてくれました。“適正に配分し直したほうが、自分に及ぶリスクを軽減できる”と上司は考えたわけです。上司自身の問題にまで発展させたことで、ノルマ軽減に難なく成功しました。

販売の数値目標、ノルマを達成できていない人は多い!
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販売の数値目標、ノルマを達成できていない人は多い!

もうひとつのケース、数字を達成する実力が自分にない場合には、やはり問題を大きくするのがポイントです。

「このノルマは自分にとっては高すぎる、無理です」というだけでは、あなた個人の問題のままです。そこで、「この数字を達成できるように頑張りたいです。でも、私にできるでしょうか。達成できなければチームの皆に迷惑がかかってしまいますよね」と、チーム全体の問題に引き上げてしまうのです。そして、「自分が最大限の努力をして、達成できる範囲は、その数字の6割だと思います」と、確実にできる数字を自己申告します。

「できない」というだけでは、単にやる気のない人間。「皆に迷惑をかけてしまうから」「自分はこの数字ならできる」といい添えると、“チーム全体のことを考えている”“責任感がある”、そんな印象を他人に抱かせることができます。

「ノルマを達成したい意欲はあるが、現時点の自分の実力では、この数字までが限界なので、どうしたらよいか」。こんなふうに上司に話を持っていき、「どうすればチーム全体のノルマを達成できるか」と、上司の視点を個人のノルマからチームのノルマへと一段階引き上げてしまうのです。すると上司は、「じゃあ、△△にもう少し持ってもらおうか」と、目標を達成できるよう、チーム内で、ノルマの配分調整を行うでしょう。

ただし、次も同じことをいうのは、単なる「能力のない奴」。次回は他人のノルマを引き受けるくらいの覚悟が必要です。評価や報酬に直結するノルマは、できるだけ低く設定し、成果で大きく上回りたいもの。周囲とのバランス、市況を読みつつ、評価を下げないよう自分の期待値をコントロールする方法は、営業マンなら備えておくべきスキルです。

(野崎稚恵=構成 田辺慎司=撮影)