「生麺1袋55円」スーパーより安いテイクアウト

わたしが訪ねた坂戸にっさい店では、レジの前に冷凍ケース、冷蔵ケースがどんと置いてあった。同チェーンの店舗では、生餃子、生麺、スープ類など冷蔵品、冷凍品を販売している。加えてネットでの通販も行っている。同社の売り上げの約4割は、これらのテイクアウト、通販といった外販が占めるという。

池野谷は「テイクアウトも重要です」と語る。

「うちの料理は、やっぱり出来立てが一番おいしいんです。それで始めたのが生餃子や生麺のテイクアウトです。調理したものをお持ち帰りになるよりも、生餃子を買って、おうちで一手間かけて調理し、焼き立てを食べていただきたい。絶対、そのほうがおいしいです」(池野谷)

テイクアウトのメニューを見ると、生餃子は20個で430円、生麺は1袋55円(160g)。ラーメン用の醤油タレは30円。スーパーで買うと、生麺は90円から100円はする。ラーメン用のタレだって60円は取られる。

「ぎょうざの満洲」で買うほうが、スーパーで生餃子や生麺を買うよりも安い。しかも、保存料が入っていない安全な食品ときている。

レジの前では生餃子や生麺を販売していた
撮影=石橋素幸
レジの前では生餃子や生麺を販売していた

原材料費は「きっちり3割かける」

こうした商品価格の設定は、池野谷が主婦だからできることであろう。プロ経営者だったら、スーパーの値段と同等、もしくは少しだけ安いくらいにするのではないか。

池野谷はうなずく。

「当社の看板には『3割うまい!!』と書いてあります。それは『原材料費として、きっちり3割かけていれば、飲食店というのは継続できる』と創業者の父が申していたからです。いつの時代も、どれほど会社が大きくなっても、原材料費はきっちり3割かける。うちはその原則をかたくなに守っています。

逆に言うと、儲けすぎていないんです。だって、うちの生麺の原料は、国産小麦粉とかん水と塩だけです。保存料などほかに何にも入れてないため、早く食べないといけないけれど、それで55円でやっていけます。原材料費はちゃんと3割です」(池野谷)

「ぎょうざの満洲」の店舗で実際に食事をして、経営者に会って話を聞いて思うのは、実に正直な会社だということ。「原材料費が3割」というのは本当だろうと感じさせるものだ。そして、店舗での提供価格を安くできるのは、メニューの種類をむやみに増やさず、製造などをすべて自社で行っているからできることではないか。

それにしても、90店舗強あるチェーンで毎日、食事をしている人たちの4割が玄米食になっているなんて……。今、日本人が気にしているのは健康に生きるということなんだとあらためて思った。

取材を終えての帰り際、池野谷は自信たっぷりに言った。

「うちの店は3回食べるとファンになると思います」

取材に同行した既婚の女性編集者は「わが家のそばにも、ぎょうざの満洲に出店してほしい」と言っていた。わたしも横でうなずいた。(敬称略)

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