苦しいときこそ、何かを「増やす」
——お店を立ち上げるにあたり、誰かに相談は?
飲食店勤務の経験がほとんどなかったので、飲食店を経営している友人や知人に意見を聞きました。今でも大切にしているのは、ケータリングをしていた会社の方に言われた「きちんとしたものを出して、ちゃんとしていれば、ちゃんとしたお客さんがつく」ということ。
お客さんが少ないから、儲けたいからと、食材をケチるのではなく、いつもちゃんとしたものを出す。人は苦しくなると何かを削る傾向にあるけど、そういうときこそ増やすことが大切だという言葉は、今、本当に実感しています。自分がきちんとしていたら、人が人を呼んで、将来的にはプラスになる。実際、営業活動って全くしていなくて、口コミでお客さんが増えて、メディアに取り上げていただけるまでになったんです。
——自分のお店を持つことにしたのはなぜ?
前は朝昼だけお店を借りていたので、朝4時半に起きて、実家のある神奈川から営業のための荷物をその度に運んで、朝6時にはお店に入っていたんですね。最初はアルバイトを続けながらだったので、週3日だけの営業。そのうち、やっていけると自信がついたので、アルバイトを辞めて週4〜5日営業をしていたんですが、やっぱりしっかりと発信していけるところが欲しいなと思って、お金を貯めて、今の店舗に移転しました。
一生懸命続けていれば、いい人が集まる
——想定外のことは?
飲食店経験があったら、想定外のこともあると思うのですが、私はゼロからだったので、ありません。飲食店をやりたかったら、また違ったのでしょうが、私はかつおぶしの魅力を伝える場所が欲しいというのが目的だったのも大きい。ひとつ良かったのは、自分に度胸があったこと。やるだけやって、ダメならダメで仕方ないと。
——大変だったことは?
職人さんとのやりとりですね。かつおぶしを作る方も、削り器を作る方も、利益はもちろん大事だけど、それよりもおいしいものを作るために懸けている人たちばかり。昔は人のことを考えられなかったりして、怒られることも多かったですね。でも苦手だと思った職人の方が、今では一番仲が良かったりするんですよ。
——これから何かを始めたい人へのアドバイスは?
続けることっていうのが一番大きいかな。一生懸命続けていれば、いい人が必然的に集まるようになると思っています。あと削り器の職人さんに言われた「飾ることよりも中身を大切にしろ」ということも私は大事にしています。