引き受けた施設の数は淡路島のなかだけで10軒
プラザ淡路島の再建にあたり、ホテルニューアワジはその恵まれた景観に着目した。景観を活かすため温泉施設の宿泊客無料利用化と客室などの軽改装を施した。さらに食事では新鮮な魚介類を仕入れるための新しいルートを確立し素材を活かした和洋折衷の創作料理を開発した。これが当たり、プラザ淡路は食と景観を売りにしたホテルとして、みごとに再生する。
ここからホテルニューアワジの快進撃が始まる。
ホテルや旅館を取り巻く環境は、2000年代に入ると一段と悪化し、全国で老舗旅館の破綻が相次いだ。洲本の温泉街も例外ではなかった。
かつては洲本で一番といわれていた老舗旅館「四州園」も営業の継続が難しくなっていく。ホテルニューアワジは、こうした旅館やホテルや保養所などを、経営者や所有者から要請を受けたり、銀行などからの紹介を受けたりしながら買収していった。
行き詰まっている施設を買い取るのであり、リスクは少なくない。しかし洲本の温泉街が、そして淡路島がゴーストタウン化してしまえば、街は廃墟になってしまう。そこでホテルニューアワジが一軒だけ生き残ることは難しい。覚悟を決めて引き受けた施設の数は、淡路島のなかだけでも10軒になる。
ホテルの施設群がひとつの街のように連なる
ホテルニューアワジが引き受けた観光施設の多くは、同じ温泉街の隣接地に並ぶ。そうなると、同じようなグランドホテルが横並びという状態になる。これではそれぞれの施設を選ぶ理由がなくなってしまう。
このため当時の淡路島にはなかった新しい仕掛けを一つひとつ導入していった。たとえば淡路夢泉景では、癒やし満足度をアップさせるため外に広がる海の眺望に包まれる露天風呂を新設。ヴィラ楽園ではラグジュアリー層向けに専有露天風呂を備えた1泊1人5万円以上の客室をつくった。2010年にはヨットハーバーに面した海のホテル島花を開業。2011年にはヨットハーバーもグループ化した。
さらに、これらの施設を渡り廊下や渡し船でつなぎ、宿泊客が自由に行き来できるようにした。その結果、ホテルニューアワジの施設群がひとつの街のように連なり、宿泊客に全天候型の湯巡りの空間が提供されている。
「ここは無理だろう」と、また笑われる
年商が75億円を超えるようになっていた2011年、ホテルニューアワジは神戸市の「神戸ベイシェラトンホテル&タワーズ」を買収した。淡路島の島外では香川県の琴平に続く2軒目のホテル経営だった。
このホテルがある六甲アイランドは、神戸市の東部にある人口島である。神戸都心からは公共交通や車を利用して20~30分ほど。日本の都市が膨張していたバブル期のホテルであり、都心回帰がトレンドとなっていく2000年代に入ると、集客には不利な立地となっており、赤字が続いていた。
そのホテルを買い取った。「ここは無理だろう」と、また笑われた。