背景には明確なセグメンテーション

見方を変えれば、大手外食チェーンが低価格路線を強化した背景の一つには、明確なセグメンテーションがある。セグメンテーションとは、多種多様な価値観を持つ消費者を、年齢、支出への考え方、好みなどの観点からいくつかの塊に分けることをいう。その上で、企業は家族連れ、社会人など、具体的なターゲットを絞る。

デフレ環境の中で低価格などを重視して成長してきた外食企業は、価格が低く、かつ、一定の満足度を求める消費者が増えると考え、その考えに基づいた事業戦略を策定した。その具体的な取り組みが、以上で記した厨房の省人化や省スペース化、自社独自の農場運営や物流システムの構築につながり、家族連れなどの支持を獲得した。今後も各企業は低価格路線を推進するために、IoT(モノのインターネット化)の技術を用いた在庫管理や、調理の方法の改善など、さらなる合理化・効率化に取り組むだろう。

このように低価格を重視する企業の背景には、その企業独自のセグメンテーションがある。セグメンテーションが異なれば、提供価格などは異なる。低価格の外食チェーンが人気を集めていることは事実だが、それがわが国の外食産業のすべてではない。

長期存続を目指すために

わが国には、低価格ではなく相応の料金を支払い、きめ細かなサービスや高級食材を楽しみたい消費者もいる。実際、東京の銀座や六本木、大阪の繁華街などに行けば、高級料亭、レストランも多い。予約を取るのが難しいお店もある。

新興国の経済成長に伴い、海外からの観光客の中には、わが国のおもてなしなど、高付加価値のサービスや食事などを楽しむために、多少の支出は気にしない人も多いと聞く。また、社会や自然環境に配慮した“エシカル”な食品を買い求める人もいる。

このように、消費者のニーズは多様化している。環境変化をとらえ、人々の支持を得られる商品やコトの創造に取り組むことは、大手外食チェーンをはじめとする企業が長期存続を目指すために欠かせない要素だといえる。

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