デフレ環境下での外食産業

わが国の外食産業は、デフレ経済の深刻化および長期化などに影響されてきた。デフレ環境下、外食産業には、徹底したコスト管理などに取り組み低価格帯での飲食サービスを提供し、消費者の支持を得てきた企業がある。

1990年代初頭のバブル崩壊以降、日本経済は長期の停滞に陥った。急速な株価や不動産価格の下落を受けて景気は低迷した。それに伴い、わが国では人々が実質ベースでの賃金増加を実感しづらい状況が出現した。先行きの景気に対する不安などから、消費者の支出意欲は盛り上がりづらくなり、低価格のモノやサービスが求められるようになったと考えられる。

こうした状況に追い打ちをかけたのが、1997年の金融システム不安だ。当時、不良債権問題の深刻化などから大手金融機関の経営破たんが相次いだ。それは、わが国経済の先行き懸念を一段と高め、社会心理を冷え込ませた。この結果、わが国の経済はデフレ(広範なモノやサービスの価格が持続的に下落する状況)に陥った。

欧州に比べてなぜ安いのか

デフレが進むと、需要は低迷し、景気は一段と低迷する。人々は、価格の低さを重視するようになる。それにより「100円均一ショップ」や大手小売り企業の「プライベートブランド」も登場した。このような中で、大手外食チェーンは低価格戦略を重視し、消費者心理に配慮した商品開発を進め、需要を取り込んだ。

一部の人がわが国の外食料金が安いと感じる一因として、デフレ環境下での企業の取り組みが実績を上げていることは重要だ。大手外食チェーンで食事をした印象を海外から来日した知人に尋ねると、「料金が高く、満足できるレストランは多い。一方、日本では低価格、かつ、味もよい外食チェーンが多いことに驚く」との印象を口にしていた。

同時に、デフレ以外の要因があることも忘れてはならない。欧州などへの旅行が好きな人の中にも、国内の外食料金はかなり安いと感じる人がいる。その背景には、ユーロなどの為替レートの影響、観光地であるがゆえの供給価格の高さなど複数の要素が影響している。