「配慮」をベースに告知を考える

では、実際の告知は誰にすればよいのだろうか。荒さんは「若手・中堅社員であれば、直属の上司を通して人事部へ。管理職の場合は直接人事部へという人が多いです。どのような場合に休職や時短勤務が可能かなど、ほとんどの従業員は知りません。告知することによって、人事部からさまざまで有益な情報を与えてもらえます」とアドバイスする。

とはいえ、なかにはどうしても会社にいい出しづらいという人もいるだろう。そんなときに、頼れる存在になってくれるのが産業医だ。

「従業員50人以上の会社は産業医を置くよう法律で義務づけられています。大きな会社ならほかに産業保健師もいるので、人事部などに話をしにくければ、そういうところにまず相談しましょう。精神的にもつらい状態なので、話を聞いてもらって、落ち着いて考えるのはいいことだと思います」と荒さんはいう。

産業医は会社側の人間だと思っている人がいるかもしれない。しかし、2019年4月から施行された働き方改革関連法に伴って、労働者の健康に関する情報の守秘義務が強化された。安心してまずは産業医に状況を打ち明け、そのうえで必要に応じて付き添いをお願いして、上司や人事に話を持っていく方法もあるのだ。

一方で、上司や同僚など周囲への告知は「配慮」をベースにして考えることを、アドバイスするのが桜井さんである。

「一番大切なのは、告知する相手は自分が配慮をしてほしいと考えている人だということです。なぜ上司に告知するかというと、裁量権を持っていて休み方や働き方について配慮してもらえるから。そして同僚に告知するのは、会議の資料を取っておいてもらったり、話し合った内容を後日教えてもらうなどの配慮をお願いするためです。そう考えると、告知する相手もはっきりして、告知にまつわる抵抗感も和らぐのではないでしょうか」

最後にもう一点、告知での大事なポイントとして桜井さんが指摘するのが「これまでの勤務態度」である。「仕事に一生懸命取り組んでいる人ならば、告知をしても上司や同僚らは積極的に配慮してくれるはず。しかし、仕事がいい加減で協調性もない人は、告知や病気を機に周りから距離を置かれるかもしれません。これまで真剣に仕事に取り組み、職場内での信頼関係も構築できているという自負があるのなら、正々堂々と告知したらよいのです」と桜井さんはいう。

たとえ検査入院であっても臆することなく告知をして、病気とわかったら一日も早く治し、堂々と職場に復帰することが賢明なようだ。

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