関税130%のレクサスすら売れる販売力

では、同社の沿革と業績について。

MGFの設立は1960年。自動車販売事業のほか、不動産事業、ショッピングモールの開発等も行っている。2000年に、トヨタがインドに進出したとき、第1号ディーラーになった。

その年のMGFトヨタの従業員数は23名だったが、現在では1100名以上(19年8月時点)。また、00年の販売台数は900台で、かつ点検、修理などサービスをした車両は2800台だった。それが今では販売が4200台、サービスが6万5600台となっている。店舗数はグルグラムに5店、デリーに1店。同社は販売よりもサービスを重視しているようで、従業員のうち、販売担当が200名ほどなのに対して、サービス担当の陣容は870名以上にのぼる。

19年上半期(1~6月)のインド自動車市場は、18年に比べると10%減と縮小しているのだが、MGFトヨタは前年比20%増を達成している。

そのうえ、同社は高級車レクサスの販売でも好調を維持している。インドで造った車には関税はかからないが、高級車を輸入すると130%の高関税がかかる。それでも、レクサスを売ってしまうのだから、販売力のある会社なのだろう。

ちなみにインドにおける自動車販売のシェアは次の通りだ(2019年1~6月)。足元ではごく一部のメーカーを除き、市場の落ち込みを受けて販売を落としている。

1.マルチ・スズキ 48.24%
2.ヒュンダイ 15.97%
3.マヒンドラ 13.22%
4.タタ 5.57%
5.ホンダ 5.04%
6.トヨタ 4.22%
7.フォード 2.51%
8.ルノー 2.26%

従業員はマンツーマンで客の世話をする

副社長のダヤルは沿革と業績の説明が終わると、「レッツ・ゴー、ゲンバ」と言った。

「トヨタ生産方式(TPS)の実践は現場で説明しなければわかりません」

トヨタ生産方式とはリードタイムの短縮を図る「ジャスト・イン・タイム」と不良品を出さない「自働化」を2本柱としたトヨタ独特の生産方式だ。もともとは生産現場の方式だったが、現在では販売、物流、事務の諸分野にも援用し、ムダをなくすこと、日々、カイゼンを続けることを2大テーゼとして、同社の従業員は実践に励んでいる。

さて、MGFトヨタの点検修理サービスにおける特徴は3つある。

ひとつは徹底した顧客志向だ。

予約した客が車を持ってきたら、入り口の警備員が全店の従業員に向けてゲートインを知らせる。その後、すぐに世話係が飛んできて、入庫、客との面談、点検修理箇所のチェックなどを済ませる。点検、修理に入るのはそれからだ。マンツーマンで客の世話をする。

ダヤルは言う。

「インドには車検システムはありません。ただし、排ガス規制があるので、お客様は一定のタイミングで車をメンテナンスする必要があります。私どもは時間と走行距離の両方に基準を設けていて、5000km走った時点、もしくは、買ってから6カ月した時点で点検に来ていただきます。また、車によっては1万km、もしくは1年というメンテナンスタイミングになることもあります。

インドのカーオーナーの走行距離は法人客でしたら、1年間に5万kmから6万km。個人客でしたら、だいたい2万km以下です」

画像提供=Toyota Motor Asia Pacific
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