中国政府高官「日本は領海侵入に慣れるべきだ」

習氏は、香港と新疆ウイグル自治区の問題について「中国の内政問題だ」との立場を譲らなかった。中国の主権に及ぶからだ。事実、習氏は12月20日のマカオ返還20年の記念行事で、「香港における外部勢力の干渉は断じて許さない」と語り、アメリカをはじめとする国際社会の批判をかわした。

尖閣の領有権問題では、「東シナ海を平和、協力、友好の海とするために、防衛担当部局間の交流促進も含めて問題に取り組んでいきたい」と習氏は話し、日本の反発をそらそうとした。

しかし中国政府は国内から批判が出ることを恐れ、「日本は領海侵入に慣れるべきだ」(中国政府高官)と公船の派遣は続ける方針は変えていない。それにしても「領海侵入に慣れろ」とは、開いた口がふさがらない。これが習政権の本質かもしれない。

「桜を見る会」の劣勢を挽回しようと外交に打って出た

会談では習氏は「私と安倍首相が緊密な意思疎通を保って新しい段階に押し上げ、両国国民に福祉をもたらしたい」と日中の新しい関係を強調し、安倍首相も来年4月に予定される習氏の国賓としての来日を挙げ、「極めて重視している。私たちの手で日中関係を次なる高みに引き上げたい」と前向きの姿勢を示した。

安倍首相は桜を見る会などで世論や野党から厳しい批判を浴び、それを挽回しようと外交に打って出た。それが習氏への強い注文の形で表れたのである。

習氏を国賓として招くことに、日本国内では反対の声もある。中国が尖閣や日本人拘束などの問題を解決しようとしないからだ。今回の安倍首相の強い注文で習政権がどう動くか、私たち日本国民はそこを見ていく必要がある。

一方、習氏はアメリカとの貿易協議で「第1段階」の部分的な合意は成立したものの、米中の対立の長期化は今後も続く。習氏政権としては、日本など周辺国を経済面で取り込んで自国第一主義のアメリカに対抗していきたいとの狙いがある。そのためには国賓としての日本を訪問することが欠かせないと判断したのだろう。

簡単に言えば、安倍首相と習近平国家主席の2人の思惑が一致したのである。