無理にでも金品を受け取らせるのは、弱みを握るため。反社系フロント企業に失うものはないが、一般企業の会社員は反社とズブズブの関係だと世間に知られたら立場が危うくなる。共犯関係を強引につくりあげて、意のままに操ろうとするわけだ。

「受け取るとご迷惑をかける」

泥沼にハマらないためには、どうすればいいのか。理想は最初からつき合わないこと。ただ、「反社チェックは非常に難しい」と屋久氏。

「反社に詳しいのは、同じ反社の人たち。民間リサーチ会社ではチェックに限界があります。世間に『チェックをした』と言えるよう準備しておくことは大切ですが、逆に言えばその程度の効果しかない」

気づかぬうちに関係が始まり、いつのまにか過剰な金品を受け取るようになっていたら、早めに会社に報告することが重要だ。後ろめたさから秘密にしておきたい気持ちはわかるが、報告が遅れるほど傷口は深くなる。

「そこで、会社としては、自主申告した社員を処分しないなど報告しやすい仕組みを作るべきです。そうすれば、社員が上司との会話を録音して我が身を守るようなことをしなくても済みますので」

あとは会社としての対応になる。役員クラスが話をつけに行くのが筋だが、交渉にはテクニックが必要だ。

「『警察の指導を受けた。このまま受け取るとそちらにご迷惑をかける』と、相手の顔をなるべく潰さぬようにして金品を返すのがベター。実際、警察にも事前に相談しておいたほうがいい。違法性があっても、反社との関係を自主的に相談しに来た会社を、警察は悪いようにはしません。安心して相談してください」

(コメンテーター=ワイズラボ代表 屋久哲夫 図版作成=大橋昭一)
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