所有者の死亡後、家族が住み続ける場合

所有者が不明の土地にまつわる問題の1つが、固定資産税の徴収だ。固定資産税の納税義務者は、原則的に登記簿上の所有者である。しかし、本当の所有者が登記されていない土地(未登記の土地)は所有者の特定が難しい。そこで政府は、令和2年度税制改正大綱で、未登記の不動産に使用者がいる場合、使用者を所有者と見なして固定資産税を課税することを決めた。

そもそも未登記の土地に使用者がいるというのはどのようなケースか。澤田直彦弁護士は次のように解説する。

「よくあるのは、所有者の死亡後、遺産分割協議が進まずに相続登記ができず、同居していた長男がそのまま住み続けるケース。ただ、所有者死亡の場合、未登記でも固定資産税は『現に所有している者』、つまり相続人に課税されます。この場合、長男は使用者である以前に現所有者の1人で、納税義務を負います」

問題は誰が現所有者なのか市町村が把握していないこと。市町村は基本的に登記簿等を見て納税通知書を送るため、現所有者が自ら届け出ない限り、徴収が難しい。そこで今回の税制改正で、現所有者の申告を制度化して、未申告には罰則を設けることになった。