不動産の評価額は4種類存在する

2019年8月、相続税対策に悩む人にとって気になる判決が出た。相続する土地の評価額を路線価で算出した相続人に対し、所轄税務署長は不動産鑑定でより高額に算出した評価額で課税。相続人らが提訴したが、裁判所は「路線価に基づく相続財産の評価は不適切」として退けたのだ。

相続不動産の評価は路線価で行うのが一般的であり、理不尽な判決に見えるが、これを理解するにはまず不動産が一物四価であることを理解する必要がある。四価とは市場取引価格の「実勢価格」と、国土交通省公表の「公示地価」、国税庁公表の「路線価」、市町村公表の「固定資産税評価額」の4つ。目安として、実勢価格と公示地価は同じ、路線価は実勢価格の8掛け、固定資産税評価額は7掛け。目安と言ったのは、公示地価や路線価は一部の土地についてのみ公表され、近所の土地でも状況によって実勢価格が異なるからだ。地価の変動によって、公示地価や路線価と大きく乖離することもある。

澤田直彦弁護士が解説する。

「高い実勢価格で正直に申告する人と、一番安い固定資産税評価額で申告する人の両方がいては、租税平等主義に反します。そこで国税庁は財産評価基本通達で、相続税は路線価または倍率方式(路線価が定められていない土地の評価方法)で評価するというルールを定めました」