バブル期は実勢価格が路線価の10倍以上にも
相続する土地を路線価で評価すると決めたのは国税庁自身。それなのに、なぜ冒頭の件で国税庁が「路線価評価は不適切」と主張したのか。
それは、路線価による申告を租税回避と見なしたからだ。路線価が実勢価格の8割なら、現金のままより、土地に変えて評価額を抑えた後に相続させたほうが相続税は安くなる。これは広く利用されている節税方法で、国税庁も基本的には目くじらを立てない。ただ、実勢価格が路線価と大きく乖離すれば、話は別だ。
「バブル期は土地が値上がりして、実勢価格が路線価の10倍以上になることが珍しくありませんでした。すると、お金持ちは財産を大きく目減りさせられるので、実質的公平を欠きます。そこで租税特別措置法が改正され、死亡時から3年前までの間に購入した土地は、その購入価格で評価することに。その後、地価が落ち着いて法律は元に戻りましたが、実質的公平を欠く場合は、租税回避と見なして実勢価格で評価するという国税庁の姿勢は変わっていません」
では、どのレベルから租税回避と見なされるのか。冒頭の裁判では、実勢価格が路線価の約4倍だった。
「投資用マンションだと、実勢価格が路線価の2、3倍になっていることはザラ。それを超えるとリスクは高まるでしょう。過去の判例を見ると、死亡前3年以内に取得していたり、相続後にすぐ売却したりしたケースが租税回避と見なされています。検討中の人は注意してください」
(コメンテーター=直法律事務所代表弁護士 澤田直彦 図版作成=大橋昭一 写真=iStock.com)