未登記の土地の使用者が相続人ではないパターンもある。

「被相続人の知人や内縁の妻など、相続人ではない人が何らかの事情で同居をしていて、死亡後も住み続けるケースはあります。田舎では、農地を知人に使わせていて、死亡後も知人がそのまま農業を営んでいるという話も聞きますね」

市町村が一定の調査をしても所有者が1人も見つからなければ、これらの使用者が納税義務を負うことになる。

資産価値が低く、「相続したくない」

今回の税制改正で、「資産価値の高い土地なのに、未登記ゆえに固定資産税が徴収されずに不公平」という状況は多少の改善が見込めそうだ。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/bee32)

ただ、これで所有者不明土地問題が大きく前進すると考えるのは間違いだ。未登記で放置されている土地の多くは、資産価値の低い土地だからだ。

登記制度は、自分の権利を第三者に対抗して主張するための任意の仕組みである。任意でも、資産価値の高い土地は第三者とトラブルになりやすいため、きちんと登記しようという心理が働く。一方、資産価値の低い土地はトラブルのリスクが少ないうえ、登記や管理の費用や手間が重くのしかかる。

「相続人も相続したくないのが本音です。その土地をないものとして相続人が遺産分割協議を進めるケースもあり、所有者不明土地が生み出される要因の1つになっています」

法制審議会で罰則付きの登記義務化が協議されるなど、国も対策に本腰を入れ始めている。しかし、澤田弁護士は「登記や管理の負担の重さを考えると、未登記に多少の過料を科す程度では効果がないのでは」と言う。未登記問題の解決には、さらに踏み込んだ対策が必要と思われる。

(コメンテーター=直法律事務所 代表弁護士 澤田直彦 図版作成=大橋昭一 写真=iStock.com)
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