質問がきっかけで新しい発見が生み出されることも

天才をうまく率いるには、創造的な聞き方を実践できるかどうかがカギになる。次に挙げるテクニックを使えば、天才とより深く通じ合えるはずだ。

・話し手をまっすぐ見る。
だれかと目を合わせているときに、ほかのことを考えるのは難しい。相手を正面から見て、表情やしぐさを観察しよう。

腕や脚を組んでいるのは気を張っている証拠だ。リーダーに反論したいが、怖くて言い出せないのかもしれない。目を合わせてくれないのは、隠しごとがあるのか、気まずくなることを言ったのかもしれない。あるいは、単に人との会話が苦手なのかもしれない(天才にはよくある)。

違いを見分けるためにも、相手が話しているときは細心の注意を払って観察しよう。

・話し手をリラックスさせる。
「あなたの話を聞いていますよ」というサインを出そう。そうすれば、こちらが話し手やその言葉を尊重していることを示せる。

リーダーが相手だと、会話下手な天才はとりわけ固くなりがちだ。あいづちを打ったり頷いたりして緊張を解こう。あまり膝を詰めすぎず、くつろいだ姿勢で、腕や脚を組まずにまっすぐ向き合うのがお薦めだ。言葉を返すときは、冷静で肯定的なトーンを心がけよう。

・意味のある質問を返す。
会話の合間に、「それはつまり……ということですか?」と、相手の話を要約する質問をしてみよう。「なるほど、じゃあ、こっちはどういうことでしょうか?」などと、さらに突っ込んだ質問をしてもいい。

質問をすれば、話に集中していることを示せるし、天才も議論をもう一歩深められる。質問は新しい展望を開き、創造性豊かでさまざまな境界が混じり合う領域、だれも踏み込んだことのない未知のわくわくする領域に会話を導いてくれる。

質問がきっかけとなって、話し手同士が途方もないアイデアをやりとりしだすこともある。難題を解決する革新的な方法をどんどん思いつき、エネルギーを高揚させ、ついには重要な発見を始めるのである。

沈黙があっても気にしない

・アイデアの価値判断を急がない。
中途半端な判断は話し手の意欲を削ぎ、創造性の芽を摘んでしまう。要約の質問を尋ねるのは、相手がアイデアを完全にひらめいてからにしたい。

ロバート・フロマス、クリストファー・フロマス『アインシュタインズ・ボス』(TAC出版)

相手の話を遮らないようにしよう。沈黙があっても問題ない。会話をじっくり反芻はんすうできるし、話し手も自分の考えを整理できる。

以上のテクニックを使えば、話を聞くときに相手への敬意を示せる。話し手への敬意がなければ、創造的な聞き方は効果を挙げない。せいぜい取引する聞き手になって、その会話にどんなメリットがあるかを考えだすくらいだ。

創造的に聞くことは、ひとりひとりの話を尊重することにつながる。話し手に自分の最も大切なもの、すなわち「注目」を差し出すのは、相手にそれだけの価値があると見なしているからだろう。

ここで意味を持つのは、「差し出す」という言葉だ。何かを差し出すとき、あなたは自分の時間を取引しない。何を得られそうかと考えながら会話をしない。話し手は緊張しないし、急かされない。ミスを気にしなくてもいい。そうした自由から、最大の創造性は引き出されるのである。

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