手柄はかえって我が身を危うくする

他人からの嫉妬は、古今東西の貧富貴賎、老若男女にとっても逃れられない人間の感情です。それを敏感に察知して上手にかわすことなしには、成功を収めるどころか、命の危険にまで晒される代物です。

歴史に名を遺した人物たちは、周囲に渦巻く嫉妬とどう向き合ったのでしょうか。その事例を見ていきましょう。

中国の後漢王朝末期から三国時代、魏の曹操に仕えたという軍師がいます。地味ながら漢の高祖(劉邦)の側近・張良にも比肩するといわれた名参謀です。この時代の綺羅星の如き俊才のほとんどが、途中で不幸な死に至り、天寿をまっとうできていない中で、賈詡は77歳までしたたかに生き残り、最後は戦死や謀殺ではなく病によって大往生を遂げています。

しかし、賈詡の人生には常に嫉妬が付いて回りました。実は賈詡は曹操に仕える前にとうたくかくだんわいちょうしゅうと多くの主君の下に在籍しています。

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なぜなら、賈詡のあまりの才能に主君たちが嫉妬し、恐れ戦いたからです。賈詡は、才能を遺憾なく発揮して李傕に助言をするのですが、あろうことか嫉妬されて謀反の疑いをかけられます。命の危険を感じた賈詡は、今度は段ワイに仕えますが、やはり恐れられてしまう。軍師がよかれと主君に尽力しているだけなのに、優秀すぎて「いつか自分の地位を奪うのでは」と怖がられてしまう。上司は100点を取る部下は喜びますが、200点も取ってしまう部下は怖くて仕方がないんです。賈詡は、次第に「才能は小出しにしなければならない」ことを学んでいきます。