親も子も、十分頑張ってきた

だから、まずお母さんの不安を取り除くようにしている。中学受験は子供がまだ小さいため、親のサポートが必要だ。すると、親である自分が頑張らなければいけないと力が入ってしまうお母さんがいる。「私が勉強を教えられないから、この子の成績が伸びないのではないだろうか」「私が働いているせいで、この子が受験に不利になっているのではないだろうか」と思い込んでいるお母さんは少なくない。それが直前期の不安をさらに大きくしてしまうことがある。

そういうとき、私は「お子さんも頑張りましたけれど、お母さんも頑張りましたよね」と、ねぎらいの言葉をかける。そして、最後は細かいアドバイスではなく、「私はお子さんとお母さんの頑張りを信じていますから」と背中を押す。そうやって、親子を安心させる。

直前期の声かけは「頑張れ!」ではない。なぜなら、親も子供ももう十分頑張ってきたからだ。

「いつも通りにやれば大丈夫!」
「あなたは今まで本当によく頑張ってきたから、神様が味方についてくれるよ!」
「今まで頑張ってきたけれど、お前の力はこんなもんじゃない。さぁ、そろそろ本気を出そうか!」

最後の最後は「あなたなら大丈夫!」

直前期の声かけは、「前向き」「ねぎらい」「明るい未来を思わせる」ことを意識してほしい。「頑張れ!」と応援するのではなく、「今まで頑張ってきたよね」とこれまでの頑張りを認め、ねぎらい、「だから、大丈夫だよ!」と安心させてあげる。子供が「そんなことない」と反論してきたら、「いやいや、お父さんとお母さんはあなたがすごいことを知っているもんね!」と冗談っぽく言ってみるものいいと思う。

どんなに優秀な子であっても、最後まで何が起こるか分からないのが、中学受験だ。精神的にまだ幼い小学生は、当日のメンタルが結果を大きく左右する。だからこそ、最後の最後は「あなたなら大丈夫!」と自信を持たせてあげることが大事なのだ。

言われたことをコツコツとやれる女の子と違って、男の子は直前期になってもマイペースなことが多い。そんなときはつい「このままでは合格できないわよ!」と発破をかけたくなるだろう。親からすると、もっともっと頑張ってほしいと思うかもしれないが、ほんの少しでも頑張りが見えたなら「頑張っているね。この調子だよ!」と明るい声をかけてほしい。すると、本人も頑張っている気分になり、入試2週間前にようやく「よし! 絶対に合格するぞ!」とやる気スイッチが入ることがある。そのくらいギリギリにならないと、やる気スイッチが入らない子もいる。

どんな子供にも最後に響く言葉は「大丈夫!」なのだ。

(構成=石渡 真由美)
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