【法廷の迷セリフ4】

「仕事はありますとも。いや耳がね、いい補聴器さえ手に入ればこんなもの、いくらでも稼げるんです。稼いで人生やり直すんです!」

6800円の財布を盗んだオヤジ。仕事先をリストラされ、耳が悪いためにどこも雇ってくれず、犯罪に走ったと動機を語り、「仕事さえありゃこんなことしません」と断言。じゃあ、仕事がなかったらまたやるのか? 検察官の意地悪な質問にもハキハキ答える。

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「それは…しません。しちゃイカンですよ。私もいい歳ですから恥ずかしい」
「でも仕事がないんでしょ?」

ここで飛び出したのが上記のセリフだった。すべては耳のせいなのだ。どんな仕事を探すのだろうか。

「人生やり直すには、やっぱり土木ですね!」

明快な主張を聞きながら、オヤジが次に狙うのは補聴器だなと筆者は確信した。

【法廷の迷セリフ5】

「私の中では、親の金は自分の金という意識があった」

「私の中では~」「自分の中では~」。これらは事件や事故を正当化したいときに使われがち。法律や世の中のルール全般を無視できる魔法の言葉である。ただ、残念ながら説得力は極めて低く、周囲の賛同は得られにくい。

上記は、金の無心を断った母親を監禁し、顔や頭を足蹴にして全治3カ月の重傷を負わせた娘が悪びれる様子もなく発した言葉。高齢の母親を介護していたとか、母親の横暴に長年耐えてきたとか、それらしい事情もなかった。

やくざな男と家を出て気ままに暮らし(親の世話は兄に任せきり)、ときどきやってきては強引に金を奪い取っていく娘に、そんな権利はまったくない。自己中心的な発想しかしない被告人にとって、親の金は自分のもの、自分の金も自分のものだったのだ。暴力をふるったことは悪いと認めたものの、金を奪ったことについては最後まで反省の素振りすらなかった。