被告人は法廷でしばしば無理のありすぎる弁明を繰り広げる。裁判傍聴歴19年で『なぜ元公務員はいっぺんにおにぎり35個を万引きしたのか』(プレジデント社)を上梓した北尾トロさんは、「苦し紛れに出てくる『迷セリフ』は、ときに傍聴席を失笑させるほど」という。そんな法廷の「名物」を6つ紹介しよう――。

裁判傍聴19年の筆者厳選の被告の「迷セリフ」

被告人にとって裁判は人生の大ピンチ。罪を認めるにしても、できれば執行猶予付き判決がほしいし、実刑なら少しでも刑期が短いほうがいい。その気持ちが焦りを生むのか、法廷ではしばしば、被告人(および代理人である弁護人)による無理のありすぎる弁明が繰り広げられる。

残念ながら、筆者はそれが功を奏した場面は遭遇したことがなく、むしろ逆効果しかないようにも思えるが……。なぜいま、あえてそんなことを言う? 法廷の名物ともいえる、迷セリフの数々を紹介しよう。

【法廷の迷セリフ1】

「彼女を……愛しているからです!」
北尾トロ『なぜ元公務員はいっぺんにおにぎり35個を万引きしたのか』(プレジデント社)

出会い系サイトで知り合った女子高生(出会った当時は中学生)を恐喝した疑いで逮捕された37歳会社員。相手に彼氏がいるとわかって嫉妬の炎を燃やし、親にばらすと脅した末、金銭を払って肉体関係を持ったものの、相手にされない(自分が彼氏になれない)ことに腹を立て、写真をネットにさらすと脅して逮捕された。

罪を大筋で認めつつ、自分は決してロリコンなどではなく、彼女との真剣な交際を望んでいたと言い訳。少女に謝罪文を書いたと話し、2度と会わないことを誓った。そして、「どうしてそうするのか?」と弁護人に問われ、大声で叫んだ言葉がこれだった。

被告人は笑顔さえ浮かべていたが、裁判長も検察官も、確信したはずだ。「コイツ、ほとぼりが冷めたらまたやるだろうな」