待遇面の交渉はなにもベースアップだけではない

ホテルのミーティングルームを借りる場合も、価格交渉に時間を割きすぎないほうがいい。あなたにとっては価値があり、ホテル側にはそれほど大きなコストが発生しないほかの選択肢を探したほうが効率的だ。

食事のときにワインを無料で提供してもらったり、休憩時にコーヒーとお菓子を出してもらったり、朝食ビュッフェを用意してもらったり、考えられることはいろいろある。あなたにとっては大きな価値のあることばかりだが、どれもホテル内の設備でまかなえるため、ホテル側にはさほど費用はかからない。

あなたが収入をアップさせたいと考えているなら、あなたの興味に即した収入源を探すといい。追加収入を得る機会を雇用主がどのような形で与えてくれるかを考えてみよう。もちろん、給与を上げてもらえれば一番手っ取り早いが、それが唯一の選択肢というわけではない。たとえば、仕事の時間をもっと自由に裁量できるようにしてもらえれば、あなたは空いた時間を使ってフリーのアドバイザーとして働いたり、セミナーを開催したりして追加収入を得ることができる。

採用面接の際にも同じことが当てはまる。給与の額だけに固執せずに、たとえば、カンパニーカーを支給してもらったり〔訳注:会社が購入もしくは一括でリースし、社員に支給する車。ドイツではカンパニーカー制度のある企業が多く、車は仕事以外でも使用可〕、引っ越し費用を会社でもってもらったりしてはどうだろう?

相手が出し渋るときは内容の価値を上げよう

しかし、相手側の予算が足りず、あなたの提示した価格を相手が支払えないときはどうすればいいだろう? 一度価格を下げれば、相手はきっと、もっと価格を下げられるのではないかと欲を出してくるだろう。そのうえ値引きに応じるごとに、あなたの利益は大きく減少してしまう。5パーセント値引きをしたことで、あなたの最終的な利益が半減してしまうこともある。

そうした場合も、価値を下げられる要素は価格だけではないという点が、問題を解決する鍵になる。そんなときのために、手ごろな価格で提供できる安価なモデルを用意しておけばいいのだ。MP3プレーヤーに、買い手の予算に合わせてさまざまな価格帯のものがあるように、相手の予算に合致する、製品の簡易バージョンを提供すればいい。

あなたが写真家で、あなたの作品の価格がコレクターにとって高すぎるようなら、プリント数を限定しない低価格の作品もつくればいい。私も、私の講演料は高すぎるという主催者が多かったため、少し前からもう少し手ごろな価格の短縮版の講演プランを用意している。