しかし、売り手が買い手の要望に合わせた付加価値をもつ商品を提供できている限り、たとえば、市場で販売されている自転車が、低価格の一種類のみなどという事態は起こらない。200ユーロで買える自転車があっても、2500ユーロの自転車を選ぶ人はいる。フレームやギアなど、200ユーロの自転車にはない要素に価値を認めているからだ。買い手が本当に求めているものを提供していれば、価格競争に加わる必要はないのである。

予算オーバーならサービスを充実させればいい

お客として、携帯電話の販売業者やインターネットプロバイダーや銀行のアドバイザーから何かを得ようとするときは、料金の話にはあまり時間をかけずに、どのようなサービスを提供してもらえるかを尋ねたほうがいい。

ジャック・ナシャー『望み通りの返事を引き出すドイツ式交渉術』(早川書房)

そうすると、たいていはあなたが払う金額よりも何倍も価値のあるものを提供してもらえるし、それに応じて、あなたがオファーしてもらえるパッケージ全体の価値も当然高くなる。

たとえば車を買おうとしていて、予算は2万5000ユーロだとしよう。だがディーラーは、あなたが買いたいと思っている車の価格を2万7500ユーロと提示してきた。そういう場合も、価格には固執せずに、3回分の無料車検とスノータイヤと向こう5年間のカーナビの更新をサービスとしてつけてもらえるか尋ねてみよう。

あなたが客の立場でそれらを利用したり購入したりしようとすれば料金表どおりのお金がかかるが、それらすべてを無償で提供したとしても、ディーラーが負担しなければならないコストは、あなたが客として支払わなければならない額よりもはるかに少なくてすむはずだ。あなたにとっては5000ユーロの価値があっても、ディーラーにとってはおそらく2500ユーロといったところだろう。

価格はいくつかある関心事のひとつにすぎない

そうすれば、あなたは予算を上回る2万7500ユーロを支払わなくてはならないものの、結果的にはあなたにとって合計3万ユーロ(車の予算額2万5000ユーロ+そのほかのサービス料5000ユーロ)の価値のあるものを手に入れられることになる。希望どおりの価格で車を売ったディーラーも、価値のあるサービスを受けられたあなたも、双方ともに結果に満足できる。

つまり、まず相手が何を求めているかを把握すること、そして相手とあなたの見解が異なる点を見つけ出すことが大切なのだ。価格はいくつかある関心事のひとつにすぎない。価格にこだわるよりも、あなたにはあまりコストがかからないが、相手にとって高い価値のあるものは何か、あるいは、相手にはあまりコストがかからないが、あなたにとって高い価値のあるものは何かを考えるようにしよう。

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