男性は早死にしないためにも妻を大切にするべき

これに対し女性は、一般に社交性に富み、地域社会や人とのつながりをたいへん大事にします。女性ホルモンのエストロゲンの影響もあり、他人への共感能力が高く、ひとりで悩みを抱えずに仲間同士で助け合いながら生きていく傾向が強いのです。

それに、女性は夫がいなくなっても家事などの生活能力の点で困ることがありません。むしろ、パートナーがいないほうがストレスや家事負担が減ってラクになったと感じる人もいるでしょう。だから、離婚をしたり夫に先立たれたりしても、健康を損なうことなく社会の中でのびのびと生きていくことができるわけです。

私は、パートナーとの離婚後や死別後に社会的に孤立してしまうかどうかは、認知症やうつ病の発症にも大きく影響すると考えています。現に、私のクリニックでも「パートナーに先立たれてからボケてしまった」「離婚後、家に引きこもってうつ病になってしまった」といったケースが非常に目立っています。

ですから、とくに男性は、早死にしたりボケたりしないためにも、パートナーである奥様のことを大事にしていくべき。具体的にはできるだけの気遣いを心がけ、その気遣いを行動でも示して、自分も家事をやったり言葉をかけたりすべきでしょう。

そうやって日々パートナーシップを深めておけば、少なくとも「いい歳になってから熟年離婚を言い渡される」なんていう怖ろしい事態は回避できるのではないでしょうか。

男性は「定年後」もボケに要注意

最近はコミュニケーション能力のことを「コミュ力」と呼ぶのだそうですね。

私は、コミュ力のない男性は、脳が衰えるのもボケるのも早いと考えています。女性はしゃべることに関しては心配ありません。

でも、男性には無口な人、寡黙な人が多く、あまり積極的にコミュニケーションをとろうとしない人が目立ちます。そういう男性がろくにしゃべらない日々を長く送っていると、脳が刺激不足に陥って早く衰えてしまうのです。

とりわけ、用心してほしいのが「定年後」です。どんなに無口な男性でも、日々仕事をしていれば、職場の人などと否応なく会話をするもの。しかし、定年を迎えて職場へ行く必要がなくなると、外に出たり人に会ったりすることが減り、コミュニケーションの機会が大幅に減ってしまいます。

奥さんや子ども、孫など、家族とよく話していればまだいいのですが、家にいる時間が長くなると、いちいち声に出すのを億劫がって次第に言葉を発さなくなっていくケースが多いのです。