記憶力と集中力が低い人には共通点がある。医学博士の奥村歩氏は、「ハメをはずせずストレスをためこみやすい人は、脳が疲労して認知症のような状態に陥りやすい。たとえば、学校の先生やお寺のお坊さんにその傾向がある」という――。(第1回/全5回)
※本稿は、奥村歩『「朝ドラ」を観なくなった人は、なぜ認知症になりやすいのか?』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。
もの忘れ外来を受診する人の共通点
この世の中に「ボケやすい職業」があるのかどうかは意見が分かれるところでしょう。ただ、脳が疲弊しやすい職業はたしかに存在します。
脳が疲弊すると、記憶力や意欲、集中力、感情抑制力が落ち、「ひょっとしたら自分は認知症なのかも」と思ってしまうような症状が現れがちです。
脳が疲弊しやすい職業は、たとえば学校の先生です。私のクリニックにはとても大勢の先生方が受診にお見えになります。新任の先生、ベテランの先生、校長先生や副校長先生、小学校・中学校から大学まで、年齢、性別、キャリアにかかわらず、たいへん多くの教職員の方々がいらっしゃるのです。
ほとんどの方々は、脳疲労・脳過労、もしくはうつ病です。私は診察中によく話を伺っているのですが、近頃の先生は働きすぎです。どの先生方も疲労をどっさりため込み、ストレスもこれでもかというくらいため込んで、精神的・肉体的にギリギリのところまで追い詰められています。
毎日、授業のためにかなりの仕事量、勉強量をこなさなくてはならないのはもちろんのこと、いじめや暴力などの問題に神経を尖らせ、モンスター・ペアレントの相手もして、ちょっとでも生徒を叱るとパワハラだ、モラハラだと騒がれ……。
なかには、「あれやこれやと忙しすぎて、魂が休まる暇もない」とおっしゃる先生もいます。これだけストレスフルな日々を送っていれば、心身が悲鳴を上げるのも当然でしょう。