うつ病による自殺者のほとんどは男性の理由

そもそも、女性のセロトニンの分泌量のレベルは男性よりも低く、体内でのセロトニンの合成速度も遅いことが分かっています。しかも、女性の場合、セロトニンの分泌が生理周期に影響されるためにたいへん不安定なのです。

PMS(月経前症候群)もそうですが、生理の前後にイライラしたり落ち込んだりすることが多いのもセロトニン分泌が不安定になるから。

すなわち、女性はセロトニンの欠乏から情緒不安定に陥りやすく、そういうときに感情を大きく揺り動かされるようなショックな出来事でもあると、どっと深く落ち込んでしまうことになる。こうした流れで、うつの症状を発症してしまうことが多いのです。

もっとも、女性の心身はとても危機対処能力に優れていて、こういったピンチに陥ると我慢したりためらったりすることなく、早めにSOSを発信して助けを求める傾向があります。

このため、比較的軽症段階で医療機関を受診することとなり、病状をこじらせることもなく、治療によってうつ病から早く脱却できるケースが多いのです。

一方、男性はセロトニン分泌が安定しているため、女性に比べればうつ病になりにくいと言えます。

しかし、なってしまうと厄介なのです。

すなわち、男性は周囲や他人に弱みを見せるのを嫌って、誰にも助けを求めようとせずにひとりで心身の不調を抱え込んでしまう。

そのため、うつが発覚して医療機関に連れてこられたときには、かなり重い状態にまで進んでしまっている場合が少なくないのです。

だから、治療にも長い時間がかかるし、そのうちに自殺のリスクも無視できなくなってくる。実際、うつ病による自殺者のほとんどは男性です。

一見タフな男性ほどうつ病になると弱い

男性がうつをひとりで抱え込んでしまうのには、「男は弱音を吐くな」「男は人前で涙を見せるな」といった教えが小さい頃から刷り込まれている点が影響しているのでしょう。

ただ、それだけではありません。じつは、男性ホルモンのテストステロンが少なからず影響を及ぼしているのです。

テストステロンは、攻撃性や性欲、競争意識を高めるホルモンとして知られていますが、このホルモンの分泌量が多い男性は、他人と馴れ合ったり他人に助けを求めたりするのが苦手で、たいへん孤立性を高めやすいのです。

それに、テストステロンの多い男性は、うつ病という診断を受けることを、「弱いヤツ」「負け犬」「落伍者」というレッテルを貼られたかのように否定的に受け取ってしまいがち。このため、つらさをひとりで抱え込んで“もうダメだ”というギリギリのところまで病気であることを隠し通そうとするわけです。

このため、一見テストステロンが大量に分泌されてそうなタフな感じの男性ほど、うつ病になると、長く辛抱したあげくにもろく崩れ去ってしまうことが少なくありません。それだけに、家族や職場の同僚など、周囲の人が早く異常や変化に気づいてあげることが肝要なのです。