APECサミット断念後のチリ情勢
最近、南米チリの情勢が一段と不安定化している。
10月18日には、公共交通機関の運賃引き上げに反対するデモの一部が暴徒化し、ピニェラ政権は非常事態宣言を発動した。同月26日、約100万人が参加して、経済改革やピニェラ大統領辞任を求めるデモが行われた。
政府は世論の不満解消に取り組んでいるが、今のところ目立った効果はなく混乱は続いている。その結果、ピニェラ大統領は11月16、17日に首都サンティアゴで開催予定だったアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を中止せざるを得なくなった。
チリの情勢悪化の背景の一つに、チリ経済の成長を支えてきた資源需要の落ち込みがある。とくに、中国経済の成長が急速に鈍化していることは重要だ。中国政府は公共投資などの景気刺激策を打っているが、期待された効果は見られない。
チリ経済の屋台骨ともいえる、銅などの鉱物資源の価格が世界的に低迷していることが大きな要因といえる。主に中国に銅(銅鉱)を輸出し、GDP(国内総生産)の成長を実現してきたチリの経済運営は難しい局面を迎えている。今後は、政府が経済を安定させ、民衆の不満を和らげることができるかどうか難しい局面を迎えている。