中国人に大阪のイメージをたずねると、必ず出てくるのが「熱情」というキーワード。情熱的でフレンドリー。世話好きで、親しみやすい。東京を歩いていて声をかけられることはないのに、大阪を歩いていると、普通に話しかけられたりする。

居酒屋に入っても、中国語のできない日本人店員が、カタコトの英語で盛り上げてくれるので、退屈しない。「楽しく飲めるのは、圧倒的に大阪だ」と。

ガチャガチャした無秩序さが居心地いい

日本の色彩感覚はおさえめで、中国人にはもの足りない感じがすることがあります。中国人はもう少し派手なものを好む。

しかし、大阪の街は派手です。巨大なグリコの看板や、巨大なフグ、巨大な動くカニといったデコレーションは、大阪でしか見られないもので、すごく面白く感じられる。派手好みの中国人からすると、「こんなものが日本にも存在したんだ」とうれしくなる。無国籍で、無秩序な感じが楽しい。

しかも、街を歩けば、あちこちからおいしそうな匂いがただよってきます。店員さんたちもオープンで、外国人相手でも平気で声をかけてくる。静けさよりも喧騒に慣れた中国人には、なんとも居心地のいい空間なのです。だから、同じ大阪でも、すましたキタ(梅田)より、ガチャガチャしたミナミ(難波)のほうが人気です。

日本人は職人的、中国人は商人的。そんなイメージは、日本でも中国でも共通してもたれているのではないでしょうか。そういう意味で、中国人は商売上手な人を高く評価するところがあります。「おぬし、なかなかやるな」と。そういう点でも、大阪人の商売のうまさについて評価する声が少なくありません。

野暮なことを言わない商売上手さ

たとえば、大阪に来たからには、誰しもグリコの巨大看板をバックにして写真が撮りたい。あるドラッグストアの2階に絶好の撮影ポイントがあるのですが、つねに窓が開けられており、「ご自由に撮影してください」と中国語で書いてあるそうです。決して「買い物しない方はお断りします」なんて野暮をいわない。

そうなると、かえって「この店で買い物してあげよう」という気分になる。だから自撮りしたあと、お店で商品を物色する中国人が多い。こういうサービスを見て「大阪人は商売がうまいなあ」と感心するわけです。

日本人は真面目に品質の高いものを作るけれど、商売はうまくない。そんな評価が一般的ななかで、大阪だけは別格のあつかいを受けている。値切り交渉がやりやすい、という声もあります。