日本舞踊はセリフのない演劇

撮影=原 貴彦
イーオン社長の三宅義和氏

【三宅】プロフィールを拝見すると、三田さんは日本舞踊の名取でもいらっしゃいますね。勉強以外にも習い事をいろいろされてきたのですか?

【三田】ピアノ、水泳、茶道、パソコン教室など一通りは体験しましたけれども、そのなかでも長く続いたのが日本舞踊と英会話スクールでした。この2つはいずれも幼稚園のときからはじめています。

【三宅】読者の中にはお子さんに日本舞踊を習わせてみたいと思われている方もいらっしゃるかもしれません。日本舞踊を学ぶ良さは、どういうものがあるでしょう?

【三田】ひとつはやはり礼儀作法ですね。「しっかり相手の目を見て話す」「礼にはじまり礼で終わる」といった基本的なマナーについて、しっかり教え込まれたと思います。あと日本舞踊の世界は70代、80代の大先輩がたくさんいらっしゃるので、「年上の方から教えを請う」「目上の方を敬う」という気持ちも学びました。

【三宅】私も今、合氣道をやっております。道場には小さい子供たちもいるのですが、礼をするとか、挨拶をするとか、物を受け取るときは両手で受け取るとか、そういったことを小さいときから自然に学んでいくというのはすごくいいなと感じています。

【三田】そうですよね。

【三宅】踊っているときは心が落ち着くといった心理的効果もあるのでしょうか。

【三田】そういった面もありますけれども、実は日本舞踊というものはセリフのない演劇なのです。単に音楽に合わせて踊るのではなく、ストーリーに沿って自分が主役になった気持ちで踊らないと「いい踊り」にはなりません。ですから踊っているときはなんだか別世界にいるような気持ちにさせてくれるものです。

【三宅】そうなんですね。ぜんぜん知りませんでした。

一生分の運を使い果たして(?)アナウンサーに

【三宅】暇があれば図書館で勉強し、日本舞踊にも熱心に取り組む。これだけ聞くとテレビのような華やかな世界とは対極のように思えるのですが、三田さんがアナウンサーになられたきっかけはなんでしょう?

【三田】もともとは大学院進学を考えていました。いずれは海外で就職し、海外で結婚し、海外で生活したいという漠然とした思いを持っていました。ただ、一方でアナウンサーになれたらいいなという思いもあり、試しに受けてみたら奇跡的に受かったという感じです。一生分の運を使い果たしたと思っています(笑)。

【三宅】アナウンサーを目指した原点のようなものはありますか?

【三田】そうですね。私は両親が共働きだったので、高校生のときまで祖父と一緒に過ごす時間が多く、いつも2人で夕食を一緒にとって、その後にテレビで7時のニュースを見ることが習慣になっていました。そのとき祖父がよく「このアナウンサーは友梨佳に似ているね」と言ってくれて。「私がテレビに出て祖父が喜んでくれたら幸せだな」と思ったのが原点です。

もうひとつのきっかけは高校のときに参加した英語のスピーチコンテストです。とにかく英語が好きだったので、英語の勉強を続けてきましたが、実は私、人前に出ることが苦手なんです。

【三宅】そうなんですか!?

【三田】はい。プライベートでは今でもそうです。人見知りですし、あまり社交的でもありません。でも、英語を話しているときは日本舞踊と同様に「別の自分になれる」という感覚があったので、頑張ってスピーチコンテストに出たのです。するとたくさん拍手をいただきまして、あのときの達成感や成功体験があったから「人に何かを伝えるお仕事に就いてみたい」という気持ちが生まれたと思っています。