なぜロングセラーのバニラヨーグルトは売り上げを伸ばしたか

「バニラヨーグルト」は、そんなニッチ・ブランドのひとつ。日本ルナ株式会社が販売するデザートヨーグルトである。

バニラヨーグルトの特徴は、手間と時間がかかる生産方法であり、長時間発酵が生み出す、まろやかで豊かなコクにある。ヨーグルトのトップシェアを争うブランドではないが、発売から25年を超えるロングセラー商品として、根強い人気を保っている。

日本ルナは昨今のメディアの変化を捉えて、新たなチャレンジに踏み切っている。

2016年に日本ルナは、「バニラヨーグルト コミュニティ」というブランドコミュニティ・サイトを開設した。会員数は年々増加しているが、その規模は現在でも数万人程度。会員数や閲覧数などの規模では、大手メーカーのサイトには遠く及ばない。

しかし、サイトの開設は意外なメリットがあった。日本ルナは、ブランドコミュニティ・サイトの運営をはじめたことで、バニラヨーグルトをどのような顧客が、どのような食べ方をしているかを、リアルにつかめるようになった。これが派手さはなくとも、しっかりと消費者の反応を得られるプロモーションへとつながっている。

その一例を、2018年のバニラヨーグルトを凍らせる食べ方のキャンペーンから見ていこう。

日本ルナはこのキャンペーンで、「バニラヨーグルト コミュニティ」を活用した。コミュニティサイトで「バニラヨーグルトを凍らせる食べる方を知っていますか?」「どれくらい凍らせるのが好きですか?」といった投稿募集の呼びかけを行ったのである。そして、そこに会員から寄せられた生の声を取り入れたメッセージを作成し、ホームページに掲載したり、店頭でのPOPに使ったりするキャンペーンを展開した。

「凍らせて食べてみよう!」と提案

日本ルナのマーケティング部ではそれ以前から、消費者のなかにバニラヨーグルトを凍らせて食べる人がいることを、営業部の情報収集によって把握していた。しかし、どのくらいの人たちがそのような食べ方をしているか、その訴求力がどの程度あるかについては、つかみかねていたという。バニラヨーグルトは与えられた予算が限られていたため、大々的なマーケティング・リサーチができなかった。

そこで日本ルナは「バニラヨーグルト コミュニティ」の会員に向けて、凍らせて食べたことがある人がどれくらいいるかを尋ねることから、キャンペーンをはじめた。25%ほどの人から、凍らせて食べたことがあるとの回答が寄せられる一方で、「そんな食べ方があるなら、やってみたい」との声も集まった。