女性は化粧品をどんな基準で選んでいるのか。これまでぼんやりとしたイメージで語られることが多かったが、ネット通販のデータ分析で意外な事実がわかってきた。コスメ通販「NOIN(ノイン)」の千葉久義COOは「リップ(口紅)では、4000円と600円の商品が『競合』になることがわかってきた」という――。
写真=iStock.com/Vladimir Sukhachev
※写真はイメージです

コスメ業界のブラックボックスに切り込む

「リップ」「ティント」「グロス」……これらはどれも口元を彩る化粧品ですが、どんな違いがあるかご存じでしょうか。

男性がこの違いを理解するのは難しいでしょう。女性は10代からメイクに向き合っています。鏡の前での試行錯誤、店での買い物、友人たちとの情報交換……。女性がコスメに詳しいのはあたりまえで、男性の私とは「学習量」が圧倒的にちがうのです。

こうした女性たちの需要を満たすため、日本のコスメ業界は約2.5兆円の市場規模にまで成長しました。しかし、それにもかかわらず、メイク情報を収集・検討し、購入を決定する女性たちの「心の動き」は、きちんと分析されてきませんでした。化粧品メーカーにとっては、卸に納品した後、商品がどのように購入されているかはブラックボックスだったからです。

たとえ百貨店で購買者のデータを取っていたとしても、それを店舗間の垣根を超えて統合し、活用する動きは見られません。店舗に並ぶ商品の種類も限定されています。また、ECサイトにしても、データを分析して化粧品メーカーに提供することはありませんでした。

私はノインに加わるまでGunosy(グノシー)でニュースのキュレーションサービスを展開していました。グノシーには「数字は神より正しい」という指針があります。どんな意思決定も数値分析にもとづいてすすめるという文化があるのです。ノインに加わったのは、そうしたマーケティングノウハウをコスメ業界で活かせるのではないかと考えたからです。