どんな人でもありのままの姿で活躍できる多様性のスポーツ

ラグビーには10個のポジションがあり、15人で1つのチームをつくります。小柄な人も太った人も背が高い人も、自分の特技や特徴を活かし、プレーできる。自分をムリに変えなくても、チームに認められて居場所を見つけ、自己肯定感を持てる。どんな人でもありのままの姿で活躍できる多様性のスポーツだと気づきました。

人に認めてもらえて自己肯定感を持てれば、他者に対しても優しく寛容になれるんじゃないか。だからコージには、ぼくらが仲良く見えたんだろうし、ぼく自身も仲間たちが明るく楽しそうに感じるんだと思います。

——ラグビーが持つ「多様性」については『ラグビー知的観戦のすすめ』でもたびたび言及されていますね。廣瀬さんはラグビースクールから日本代表まで、所属したチームすべてでキャプテンをつとめてきましたが、多様な特徴を持つ選手を1つのチームにまとめるうえで意識してきたことはありますか?

撮影=尾藤能暢

何より重要なのは「目的」だと思います。前回W杯の日本代表は「なんのために勝つのか」という問いに対して、「憧れの存在になるために、勝とう」という目的をみんなで共有することができました。その結果、すばらしいチームになりました。

ぼくがキャプテンを任された2012年当時、プレーヤーだけでなく、ファンの人たちも含めて、日本代表に対する愛着が低かったような気がしていました。ラグビーファンに印象に残る試合を聞けば「×年前の早明戦」とか「7連覇した新日鉄釜石や神戸製鋼のゲーム」という答えが多かったと思います。そこでキャプテンとして、まずは日本代表を憧れの存在にしなければ、と思ったんです。