意外な人が夢に出てくる理由
夢に出てきた人のことが後々まで気になるという経験は、時として起こります。これを「もともと思いがあったから夢に出てきたのだ」と、自分でも気づかない深層心理の表れと考える人もいますが、心理学の見地から、夢に出てきた人を好きになるメカニズムについてご説明したいと思います。
まず、睡眠中に見る夢の役割についてですが、記憶の整理や定着のためだといわれています。私たちが直接的あるいは間接的に経験したことは、長期記憶に全部ストックされています。そして、一晩の眠りの間には、レム睡眠とノンレム睡眠が繰り返され、「夢を見る眠り」といわれるレム睡眠では、体は休んで動かないようになっていますが脳は比較的活性化しています。このとき脳は、起きている間にうまく処理できなかった情報や感情を整理し、記憶の棚のどこにしまうかカテゴリー分けをしたり、過去の記憶にアクセスしたりしています。
強い関心事や、いつも心の片隅にあるような事柄は、寝ている間も記憶の保存場所に何度もアクセスしているので、心に思っている人が夢に出てくるということは、確かにあるでしょう。たとえば、自分が憧れているアイドルや、俳優、アーティストが夢に出てくる場合がそれに当たります。
一方、ふだん特別の関心を払っていなかった意外な人が、夢の中に登場することもあります。これは、最近あった出来事で、脳が処理しようとしていた事柄との関連や類似――時代、集団、場面、色、数字、名前の音韻が同じなど――がトリガー(引き金)となって、長期記憶に保存されている中から引っ張り出された可能性があります。