次に、いざという時の避難先や避難方法を決めておきたい。さらには、江東5区から離れて避難できない場合にどうするかを考えておく。江東区の場合は、広域避難できない場合に避難場所となる公共施設の一覧をハザードマップに掲載している。
「浸水リスク」の説明を受けず家屋が全壊
2018年の西日本豪雨では、土砂災害や川の氾濫などで237人の命が失われたほか、約1万8000戸の住宅が全半壊。現在でも多数の世帯が応急仮設住宅やみなし仮設住宅での生活を強いられている。
同年9月の北海道地震に見舞われた札幌市清田区では、土地が液状化し地面が激しく隆起したり陥没したりするなど、地域の約30%超で建物が傾いた。当地域はいわゆる「谷埋め盛り土」であり、かつては田んぼが広がり川が流れていたところで液状化が発生しやすかった。
国土交通省は、浸水想定区域などを説明するよう求める通知を出しているが、不動産取引の重要事項説明において説明義務はなく、その対応はまちまちであるのが現状だ。清田区の住民ももちろんこのようなリスクの説明は受けておらず、憤りを隠せない。
相次ぐ災害を受け、全国知事会は7月23日から2日間の日程で開催された富山市での会議で、不動産取引の際にハザードマップを提示するなど浸水リスクの説明を義務付けるよう国に提言することを決めた。
標高の高い内陸部にも危険は潜んでいる
「浸水」や「洪水」といえば、江東5区や海沿いの低地などがイメージされるが、浸水可能性のある地域は標高の高い内陸部にも存在する。そしてそうした地域にも、一戸建てやマンション、アパートなどが普通に建設されているのだ。
例えば東京都世田谷区の標高は30~35メートルだが、ハザードマップを見れば2メートル以上浸水する可能性のある地域が存在する。その原因は「ゲリラ豪雨による多摩川の氾濫」。都市の雨水排水能力は一般的に50~60ミリ/時間を目安として設定されているなか、ゲリラ豪雨は100ミリ/時間を超えることもあり、排水能力が追い付かなくなると、水は周辺より相対的に低いところに流れていくためだ。
こうした立地の建物は、洪水を予測して基礎を高くするなどの工夫が施されていればまだマシだが、建物の容積率を稼ぐ目的で、地下や半地下を備えた一戸建てやマンションも多数存在する。
例えばこうした半地下物件は、一戸建ての場合数万円の「ポンプ」で排水処理を行う。このポンプの処理能力は果たしていかほどだろうか。また壊れたり、停電で止まったりしたらどうなるのか。建物の構造も合わせて確認したいところだ。