プロジェクト化した仕事が増えていく
俳優の多くは芸能事務所に所属しているが、会社員ではなくマネジメントを代行してもらっているだけだ。人気俳優は青天井で莫大な利益を稼ぐが、売れないと収入もなくなる。アーティスト(作家、マンガ家、歌手など)やスポーツ選手も同じだが、(収入がベキ分布する)一攫千金型のクリエーターに会社員の働き方はまったく合わないのだ。
これからフリーエージェントが増えていくと、さまざまな仕事が映画製作の現場のようになっていくだろう。これが「プロジェクト化」で、シリコンバレーのIT企業などでは、終身雇用で社員を「雇う」のではなく、プロジェクト単位で世界中から最適な人材を高給で集め、プロジェクトが終われば解散する仕事の進め方が一般的になってきている。
最近、「ギグエコノミー」という言葉をよく聞く。「ギグ(gig)」とは、ジャズ・ミュージシャンなどがライブハウスでセッションを組んでその場限り(単発)の演奏をすることだ。それが転じて「即興的な仕事を楽しむ」働き方をいうようになった。
ところが「ギグエコノミー」がウーバードライバーなど低所得の仕事にも拡張されたことで、この言葉はいまではネガティブな意味で使われるようになってしまった。エンジニア(プログラマー)やコンサルタント、法律家・会計士などのスペシャリストが専門性を活かして「ギグ」することと、アプリを使ってアルバイト仕事を単発で入れていくことはまったくちがう。
「フリーエージェント化(ギグエコノミー)」が発展すると会社はなくなる」というのも誤解だ。プロジェクト化が進んだ映画産業でも、できあがった作品は映画会社によって上映・配信される。出版社や音楽会社でも同じだが、(すくなくとも現在のところは)コンテンツを流通させるためのプラットフォームは会社(グローバル企業)が担った方が効率がいいのだ。
幸福な人生をつくる「3つの資本」
「人間関係を自由に選択したい」というのは「後期近代化」の必然なので、日本でもこれから、組織に所属して働くのではなくフリーエージェントを選ぶ人たちが増えていくだろう。そんな世の中で生き延びるにはどうすればいいのか。ここで重要になるのが「評判」だ。
「評判とは何か」を説明する前に、人生を左右する「幸福の資本」について述べておこう。
幸福の定義はさまざまだろうが、その土台は「金融資本(お金)」「人的資本(仕事)」「社会資本(愛情・友情)」からできている。お金がなく、仕事もなく、家族や友だちもいなければ幸福な人生はつくれない。この状態が「貧困=不幸」だ。
満足感や充実度のレベルは別にして、3つのうちどれか1つでもあれば、「貧困=不幸」にはならない。
たとえば、貯蓄はなく仕事はアルバイトで収入は少なくても、恋人や友人に恵まれているというタイプ。「社会資本」のみに支えられているのは「ジモティ」や「マイルドヤンキー」と呼ばれる地方在住の若者たちで、貧乏だからといって不幸(貧困)ではない。財布の中身はさびしくても週末ごとに学校時代の友だちと集まって充実した時間を過ごす彼ら/彼女たちは、「プア」(貧乏)でも「充実」している「プア充」だ。
貯金もないし恋人や友だちもいないがIT企業などで働いていて高い給料をもらっているのは「人的資本」のみ持っているタイプ。彼らは「1人」でも仕事が「充実」している「ソロ充」だ。