先ほど、強度の近視にレーシックは向いていないと言いましたが、50歳以上の老眼患者や白内障がある患者にもレーシックは向いていません。50歳以上の方は老眼が強くなるので、白内障手術時に「乱視矯正拡張型焦点眼内レンズ」を移植することで、近視も乱視も老眼も治すことができ、満足度も高いのです。いい手術でいいレンズを移植すれば、100歳まで持ちます。裸眼で遠くも近くもよく見える目が得られるのです。

また、これとは別に、単焦点レンズ移植による「モノビジョン法」という方法もあります。一方の目を「遠くが見える」ように合わせて手術をし、他方の目は近くに焦点を合わせるのです。両目がバラバラの視力であっても、脳は両方の目からの画像のうち、ピントの合っているほうを選ぶので、近くも遠くも見えるようになります。

今や多くの日本人が90歳近くまで長生きする時代になりました。ところが、目の寿命は65~70年とずっと短いのです。そのため、命がつきるより先に、白内障、緑内障、網膜剥離、加齢黄斑変性など失明につながる病に必ずかかってしまいます。目が見えないとどうなるか。情報が入らないので脳を使わなくなり、脳の機能が落ちていく。認知症になる可能性も上がるのです。

眼科外科医には手術数と成功率を尋ねよ

眼科医になるためには研修中に一定数以上の白内障手術や網膜手術の経験が求められます。では、その経験をどこでしているのでしょう? 答えは、大学病院や大学関連の総合病院です。大学病院や大学関連の総合病院では、患者は手術経験が乏しく知識も浅い研修医の練習台になることが多いのです。

もちろん手術研修は必要です。しかし手術の練習はできる限り人間の目ですべきではない。私が研修医のときは、解体施設からもらってきた豚の目約600個を使い、手術の練習をしました。豚の目はヒトの目とよく似ているのです。この練習のおかげで、私は白内障手術では、最初から裸眼で1.0といういい視力を出す結果を残しました。

もっとも、眼科先進国のアメリカでも大学病院は研修病院となっています。しかしアメリカの研修医には「必ずや外科医になる」という意気込みがありますから、優秀です。しかも、臨床経験豊富な指導医が教えますので失敗もまずは起こりません。また、研修医が執刀する手術においては患者と契約を交わします。つまり「手術を担当するのは研修医のA医師で、B医師が指導医としてつきます」と患者に明示するわけです。当然ながら指導医は、「指導者として失敗は絶対にしない」ことを心に誓って、後進の指導に臨みます。

ちなみにその際の手術代金は非常に安いものとなります。患者にすれば手術の研修材料になるけれども、費用がタダ同然になるので、医療費の高いアメリカでは、研修材料になることを納得して受けています。