アメリカやドイツで研鑽を積みました
私は日本の医大出身ですが、日本にいては患者のためになる技術は学べないと感じ、アメリカやドイツで研鑽を積みました。最近ではオランダで、世界で最先端の角膜内皮の移植手術を学び、執刀もしました。
「レーシック手術」という言葉を耳にしたことがある方は多いでしょう。これはレーザー波で角膜を削り、近視、遠視、乱視などを矯正するものです。
1994年の日本で初めてのレーシック手術は、私が横浜で行いました。患者への説明の際にはいいことばかりではなく、可能性のある合併症の話など、悪いこともたくさん話しましたので、患者さんからすれば驚いたことでしょう。しかし、すべてを隠さず正直に説明したためか、とても信頼してくださいました。その結果、私の患者のレーシック手術は全部成功しました。
最初の手術から25年経過した今、これらの方々は白内障手術を受ける世代となり、再来院しています。その方たちに今度は「多焦点眼内レンズ」(注5)を移植し、白内障を治すだけでなく老眼も治して、裸眼でほとんどすべてのものが見える目を取り戻しています。
注5●多焦点眼内レンズ:白内障の手術に使用する眼内レンズには、保険適用できる単焦点レンズと保険適用外の多焦点レンズがある。単焦点レンズは、ピントが1点しか合わないため、メガネを併用する。多焦点レンズは遠くと近くで焦点が合う遠近両用の眼内レンズ。最新の多焦点眼内レンズには、連続的によく見える「拡張型焦点レンズ」や「乱視矯正拡張型焦点レンズ」もある。
レーシックは今でも、軽い近視には効果的です。レーシックは角膜を削るので、強い近視では角膜の歪みによる高次収差などが多く、向いていないんです。ただし、レーシックをする際は、白内障や網膜剥離の手術などを完璧に行える、きちんとした眼科外科医に依頼しなくてはいけません。眼科ではない美容外科系の施設でレーシック手術を受け、網膜剥離など合併症を起こし、私の病院に助けを求めてくる患者さんがいます。安いからなどという理由で安易に施術先を決めてはいけません。
視力屈折矯正手術には、ICL(注6)という目の中に小さなレンズを入れるものもあります。角膜を削るレーシックと違い、角膜を3ミリ切開するだけですむ角膜障害が少ない手術法です。
注6●ICL:ICL(後房型有水晶体眼内レンズ)手術は、虹彩と水晶体の間にレンズを移植して近視・遠視・乱視を治す方法。移植したICLは必要に応じて取り出せるため、視力が変わったらレンズの交換もできる。また、白内障手術時に取り出すことも可能。
最近ではICL自体の改良も進み、合併症もほぼ起きなくなりました。このため近視や乱視矯正としてICLを入れた術後に、私の病院では、ほとんどの症例でよい裸眼視力を得ています。
また、ICLは取り出すのが簡単なため、将来に白内障が起きた場合でも、ICLを取り出した同じ切開場所から白内障手術をし、そのあとに多焦点眼内レンズを移植することもできます。この、多焦点眼内レンズは近年発達が目覚ましく、最新型の「乱視矯正拡張型焦点眼内レンズ」を移植すれば、メガネもコンタクトレンズも使わず裸眼で、ほとんどすべての距離でよく見えるようになります。