目を酷使するプロは、視力をどうやって維持しているのか。雑誌「プレジデント」(2019年7月19日号)の特集「眼医者、メガネ屋のナゾ」では、「目が命」のプロたち5人に話を聞いた。2人目はパイロットの西山裕一氏だ――。(第2回、全5回)
▼ホットアイマスクと野菜ジュースは必携品

厳しい航空身体検査

現場で航空機を操縦するパイロットは、「航空身体検査」を年に1回もしくは2回受け、それにパスし続ける必要があります。この検査は、航空業務を安全かつ的確に遂行できる健康状態であるかを確認するためのもので、内科、耳鼻科、精神科領域等、心身の状態がくまなくチェックされます。肥満度を示すBMI値にも上限が設けられているほど厳しいので、パイロットという仕事をしていると、自ずと健康への意識が高まり、同僚からもいろいろな健康情報が入ってきます。

全日本空輸・機長 西山裕一氏

なかでも私たちにとって重要なのは、やはり「目」に関することです。私が受験した頃に比べれば、視力条件の緩和が進んでおり、1995年からは日常的にメガネやコンタクトレンズを使用する人でもパイロットになれるようになっています。ですが、目が操縦の要であること、視覚情報の重要性に変わりはありません。離着陸時にきちんと滑走路や計器などの情報を見て、都度的確な判断ができるかどうかが安全に直結するのです。

そこで私が日常的に心がけているのは、何か調べ物をするときは、スマホ等の小さな画面でなく、できるだけPCの大きな画面で見ること。フライト中や勉強のときに使うマニュアルはiPadがメーンとなり、パイロットが画面を見る機会は増えています。また、オフィスでPC作業をするときも、1時間に1回は目の運動をし、休ませています。目を閉じてグルグル回すことによって目の周りの筋肉を動かしたり、遠くを見たり。フライトの際には市販のホットアイマスクを持っていき、ホテルで寝る前に使用することもあります。

医薬品の使用についてパイロットは、市販品の場合第二類以上の使用に制限があり、処方薬も含めて詳細なルールが決められており、基本的には申告が必要です。そのため普段は目薬は使いません。

食事は目の健康も考えて、栄養バランスのいいものを。渡航先によっては、あまり野菜が摂れないこともあります。ビタミン不足は目によくないとされていますので、野菜ジュースを持参しています。