「予定が見えない」はマウンティングの言葉
【まだ予定が見えない】
打診された日程で5個以上の予定を調整している状況なら、この言葉は理解できる。あるいは、長期出張が入るかどうかの決定を待っている状態であるとか、取引先など相手の都合次第で予定がひっくり返る可能性が高く、さらには何時間拘束されるかもわからないなんて場合であれば、文字どおり「予定が見えない」に違いない。
だが、平時にこの言葉を多用してしまうと、「パッツンパッツン」と同様、相手は「あなたとの約束は優先度が低い」と言われたように感じるだろう。
ビジネスの基本は恨みを買わないことであり、相手に「見下された」「軽んじられた」と思わせないことが重要だ。しかし「まだ予定が見えない」というフレーズからは、相手に対してマウンティングをするようなニュアンスが醸し出されてしまうことも少なくない。
予定なんてものは、グーグルカレンダーだろうが手帳だろうがなんでもいいが、お互いスケジュールを照らし合わせて空いている時間を見つけ、「じゃあ、ここにしましょう」と即座に決めてしまえばいいのである。後は「先約優先」というルールを順守するだけでいい。
「朝イチ」「午後イチ」とは何時なのか
【てっぺん】
時計の長針、短針ともに真上(てっぺん)を指している状態ということで、要するに「午前0時」という意味なのだが、若い頃は私も「おぉ! てっぺんを超えてしまった!」などと言っていた。新卒で入った広告代理店に勤めていた当時、会議で「てっぺん」を超えると、皆が途端に興奮しだす感覚があった。「オレらは2日間にわたって仕事をしているんだぞ!」という高揚感からだろうか、たとえそれが無駄な会議であろうとも“人々が寝静まるなか、わが身をささげて世界を救う勇者”として活動をしているような気分になったものだ。まあ、明らかに誤解だったが。
【朝イチ】
「朝一番」の意味で、「朝イチで打ち合わせをしよう」や「朝イチまでに送ってください」などと使われる。たとえば、職場での打ち合わせであれば「始業時刻に集まり始めて、15分もすれば全員がそろうだろうから、そこから打ち合わせに入れるな」といった解釈ができるのだが、「朝イチまでに送ってください」は、あまりに漠然とし過ぎている。というのも、人により「朝イチ」の解釈は違うからだ。
受発注の関係性で用いられた場合、発注側は「わが社の始業時刻である午前9時ごろまでに提出物を送ってくれ」と暗に意図しているのだろうが、受注側は「朝イチというのは8時ぐらいから11時ぐらいまでのことかな」などと思っていたりする。なかには「オレにとっての朝イチは11時59分までだ!」なんてことを主張する者もいる。
よって、人により解釈が異なる言葉で時間を決めるのは「バカ」と言わざるを得ない。「10時までに送ってください」と、明確な時間を示すべきなのだ。恐らくは「朝イチ」という言葉を使うことによって「私はあなたに対して、厳しい要求をしているわけではないのですよ~」という配慮をにおわせているつもりなのだろうが、正直、締め切り時刻は具体的に設定してほしい。
【午後イチ】
昼休みを挟んで、午後の業務の開始時間──13時ごろを意味している場合が多いようだが、これも「朝イチ」と同様にあやふやな言葉だ。とはいえ、長めに見積もっても「13時59分」が限界だろう。解釈の幅は狭いのでまだ救いようがある。