記憶と健康的に付き合えば前向きになれる

そこで必要なのが、自己改造である。そのための効果的な方法が記憶健康法だ。改めて念を押しておくが、それは記憶との健康なつきあい方であって、記憶力を高める方法ではない。

記憶健康法とは、記憶をうまくコントロールし、使いこなして、イキイキとした、また安定感のある、前向きで健康な人生を導くための方法である。ちょっとしたことで傷ついたり、うつ的な気分に落ち込む人が急増している。いったん沈み込むとなかなか浮上できないという人も少なくない。そうした徴候も、記憶のあり方に問題があるのだ。

記憶健康法を習得して、記憶を整えることができれば、傷つきにくく落ち込みにくい心が手に入る。どんなときも前向きの気持ちを失わず、頑張ることができるようになる。

人生とは記憶である。すでに述べたように、自分に価値を感じるのも感じられないのも、自信がもてるのももてないのも、すべては記憶しだいである。

「不健康な記憶」に支配されてはいけない

何とかなるさと楽観できるのも、どうにもならないような悲観的な気分に襲われるのも、記憶しだいである。明るい展望を描くことができるのも、描くことができずに閉塞感に苛まれるのも、記憶しだいである。他人を信頼できるのも、だれに対しても不信感が拭えないのも、これも記憶しだいである。

榎本博明『なぜイヤな記憶は消えないのか』(KADOKAWA)

何もやる気がしないというのも、人生に前向きになれないというのも、自分に自信がもてないというのも、人を信用できないというのも、すべては不健康な記憶に支配されているのである。

自分の人生は挫折だらけ。自分の人生はどうにもパッとしない、もっと輝きたい。将来に何も希望がもてない、明るい展望がない。こんな状態から脱するには、記憶システムを健康なものに変えていく必要がある。

たとえば、記憶を整える必要がある。そして、記憶へのアクセスの仕方を調整していく必要がある。今すぐ記憶健康法を実践して、前向きの人生を手に入れよう。

榎本 博明(えのもと・ひろあき)
MP人間科学研究所代表
心理学博士。東京大学教育心理学科卒業。東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。カリフォルニア大学客員研究員、大阪大学大学院助教授などを経て現職。『なぜ、その「謙虚さ」は上司に通じないのか?』、『「忖度」の構造』ほか著書多数。
(写真=iStock.com)
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