車検をしている「30分」がセールスチャンス
トヨタは現在、「モビリティサービスを目指す」と標榜している。
それで言うと、「町でいちばんの自動車屋を目指す」こととは、つまり、自動車だけを売る販売店からモビリティサービスへの脱皮を意味している。
カローラ徳島はトヨタが目指す方向へいち早く変化しているモビリティサービスショップと言えよう。
カローラ徳島に限らないが、トヨタ系列の販売店はカイゼンした結果、車検の時間が短くなっている。45分車検が通例だ。だが、カローラ徳島は30分で車検を済ませてしまう。
多田は「車検が短いことがセールスポイントとなり、営業マンは恩恵を受けている」と語る。
「トヨタ系列以外では、車検というとまだ代車を出しているところが多いんじゃないかな。うちも昔は代車を出していました。今でも長期の修理となると代車を出しますが、全部、新車です。
それにしても車検が30分で済むというのは大きい。お客さまは店にやってきて、お茶を飲んで、話をしていく。そこがセールスチャンスですよ。昔は年に180台の車検を請け負っていたけれど、半分以上はお客さまの家まで取りに行って、車検が終わったら届けに行った。それが30分だと店に来ていただける。これはもう、すごくありがたい」(多田)
「売ってこい」ではなく「選んでいただこう」
他にも同社はさまざまな組織的手法を取り入れて、営業マンをバックアップしている。たとえば、トヨタのカイゼン部隊に頼んで、車検だけでなく、修理サービス部門を効率化し、顧客が待つ時間を短縮した。営業マンはトヨタが開発した顧客管理システムを利用している。加えて、「メンテナンスパック」というサービスパックも開発した。メンテナンスパックは半年ごとの点検と車体を守る塗料「ボディコート」が格安価格になるサービスだ。ボディコートを塗っておけば車を売るときの「下取り価格」が高くなる。顧客からすれば、かなりの得になる。
竹内は語る。
「お客さまのニーズを大切にしています。徳島って県民性が堅実なんです。それに買ってくださいと言って買っていただける時代は終わりました。私自身、買え買えと迫られて物を買うことはありませんから。だから、私は営業マンに『売ってこい』ではなく『選んでいただこう』と言っています。
みなさん、ご存じですか? 四国各県の県民性を表す面白い話があるんです。
1万円札が落ちていたとします。1万円を拾って、5000円で飲みに行って、残りの5000円を貯金するのが香川の人。1万円を拾って、飲みに行くのが愛媛の人。1万円を拾ったら、自分の懐から1万円を足して飲みに行くのが高知の人。そして、徳島の人は1万円を拾ったら、自分の1万円を足して貯金する。しっかり者で堅実なのがうちの地域のお客さまです」