トヨタが10億ドル(約1000億円)を出資し、取締役まで派遣している配車アプリ運営会社がある。マレーシアで起業し、いまは東南アジア一帯でサービスを展開する「Grab(グラブ)」だ。ノンフィクション作家の野地秩嘉氏は「シンガポールでグラブの現場を見て、日本がいかに遅れているかをただただ痛感するばかりだった」という——。
ウーバーの東南アジア事業買収を発表
グラブはマレーシアで起業し、東南アジア一帯でサービス提供を行う配車アプリを運営する会社だ。配車アプリだけでなく、オートバイ配車のGrabBike、相乗りサービスGrabHitch、配送サービスGrabExpress、料理を配達するGrabFood、そして、決済サービスGrabPayなどを提供している。2018年3月には、同業で世界大手の米ウーバー・テクノロジーズの東南アジア事業を買収すると発表した。
株式を公開していないこともあって、企業情報は推定に頼るしかないが、市場の占有率は高く、成長のスピードは速い。たとえば、ブルームバーグは以下のように報じている。
「グラブは2018年10億ドル(約1100億円)と見込む売上高が19年、2倍に達すると予想」(18年9月6日)
また、同社コーポレートプロフィール(19年5月)には、次のような文言が掲載されている。
「Grabアプリは1億5200万台のモバイルデバイスへダウンロードされ、ユーザーは900万以上の運転手や店、代理サービスを利用」
同社webサイトでは、「12年の創業以来、19年1月にはユーザーの合計乗車数が30億回を突破した」という記載も見られる。