中学数学で、仕事に必須の「多段思考力」を鍛える

「数学を学ぶ目的は、世の中の課題を解決すること。30年にわたって数学とつきあってきましたが、こんなに切れ味のいい『武器』はありません」

東京大学先端科学技術研究センター教授 西成活裕氏

こう断言する著者の西成活裕氏は、様々な渋滞を分野横断的に研究する「渋滞学」を提唱したことで知られる数理物理学者だ。東京大学で教鞭をとる一方、企業からのコンサル依頼が引きも切らない。その傍ら、小学生から主婦に至るまで、幅広い層に数学の楽しさを伝えている。

大人が数学を学び直すメリットは何か。それは、ビジネスに不可欠な「思考体力」が養われることだという。

「なかでも大事なのが『多段思考』です。いわゆる『頭がいい人』は、複雑な課題に対しても、一段また一段とロジックを積み上げながら、粘り強く考え続けることができる。中学数学を復習するだけでも、この力がガンガン鍛えられます」

数学アレルギーを持つ人にとって、複雑な公式の数々は苦い思い出のはずだ。だが西成氏によれば、公式を覚える必要はまったくないらしい。

「公式の丸暗記ではなく、論理的に解を導く力が重要。私自身、中学で習う二次方程式の公式を覚えているかどうか怪しいものですよ」